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9月〜12月10日までに観たものについて(2016年9月-12月10日)

キングオブコント後に一度もブログを更新していなかった。9月〜12月10日までに見たもので一言書いておきたいものについて。

10月7日『主人がオオアリクイに殺されて1年が経ちました』@俳優座劇場

かもめんたるが出ているので観に行った。観る前から、面白いと思えるものではないと充分にわかっていたけど、かもめんたるがどんな演劇に出て、どのようなことになっているのかは、演劇とお笑い、特にかもめんたるが好きな自分にとっては、観たくなくても観なければならないと思った。冒頭のシーンが始まって、まずは槙尾さん含め半数以上の役者が登場。何一つ面白いところがなくて、というより面白くないところしかなくて、血の気が引いてしまった。槙尾さんは、周りの環境に馴染むのが上手そうなので、想像の範囲内だった。う大さんがこの空気の中でこれから登場するということが、私が好きなかもめんたるが、私にすら面白くないように見えてしまうのではないかということを想像して、血の気が引いていた。そしてう大さん含め残りの役者が登場した。う大さんはう大さんなのだった。あの雰囲気の中でも、傷つくことなく揺るがない魅力があって安心した。う大さんのつくる空気だけ面白く思えた。それにしても、かもめんたるレベルの俳優がこんな演劇に出るということがおかしい。チョイスを間違えていると思う。かもめんたるというブランドに傷がついている。かもめんたるは演劇を作ることを志しているものの、演劇を選ぶ眼力がないのだと思う。というか、能動的にあまり観ていないのだと思う。もっと観て、自ら選ぶべきだと思う。もしくは、作ることにこんなにもまっすぐな人たちでも、こういうものに出なければならない事務所とのしがらみがあるのだろうかと思うと悲しい。

10月9日テスト・サンプル06『ひとりずもう2』@早稲田小劇場どらま館

二回目の「ひとりずもう」。サンプルの俳優のショーケースであり、「一人芝居」であることから笑いとも切り離せない演目が多数。今回は特に奥田さんの禁欲的な演技が面白かった。特に序盤はずっと見ていられるディテール。好みから言うと、終盤の方で守護霊の話になった時に、観客と共有しやすい「おかしさ」に歩み寄ったような感じがして、ちょっと大げささを感じて、もっとささやかな違和感の「おかしさ」のレベルでもっと見ていたかった。古屋さん、松井さんのは、前回より観客に歩み寄って、より、自ら笑いを起こそうとしているようにも思えた。ふたりとも、おかしなできごとを引き起こしているのにもかかわらず、本人は大真面目なのだから可笑しい。野津さんの演目は、チェルフィッチュ的な手法を工夫なくそのまま借りてきたように思えて、特に面白くは思えなかった。辻さんの演目は、いかにもありえそうな生活の生々しさが好きで面白かった。『ひとりずもう3』、またぜひやってほしい。

10月27日『来てけつかるべき新世界』@KAAT

学生時代に観て、あんなに面白かったヨーロッパ企画を、あまり面白いと思えなくなってしまっていた。これは、ヨーロッパ企画が面白くなくなっているのではなく、私の好みが変わってしまったのだ。一つ一つの演技が大きく見えて、台詞の不自然さが気になってしまった。クサイ演技だと思ったのだ。大げさだなと思ってしまったのだ。そんな点をあげつらうものではないことはわかっているけど、そういう自分の好みが細分化していることについて、本当にいいことなのかな、と思った。

11月14日新聞家『揃う』@Arts Chiyoda 3331

初めて新聞家を観た。途中寝てしまった。寝てしまったので大きいことは言えないけど、とはいえ印象だけ書いておこうと思う。私はよく演劇を観ていて、これって俳優を使って演劇という表現方法で観るべきものなのだろうか?と思うことがある。新聞家の上演は、台本を読めばいいのでは、と言える気がしたけど、これは演劇で観るものだと思った。自由な速度で自由な抑揚をつけて勝手に台本を読むという体験とはまったく異なる、俳優からもたらされる細い細い表現で受け取り、受け取った情報から観客が想像を膨らませてしまうという手の加わった自由さ(不自由さ?)、みたいなものと、読み飛ばしてしまいそうな小さな表現も必ず受け取らせる不自由な速度が、演劇体験の時間だなという感じがした。そういう点で面白く観た。ファイヤーキングのカップ、とか、九谷焼のカップ(だったか?)、とか、ブラウンの時計、とか、固有名詞が多く出てきた。そのあってもなくても良いと思えるような固有名詞が、私はなんだか鼻についた。なんだか衒いを感じてしまった。このことは私のとても個人的な感傷かもしれない。もう一度観に行こうと思った。

11月18日マレビトの会『福島を上演する』@にしすがも創造舎

空気を吸うように自然な気持ちでとてもおもしろく観た。好みに合うということはこういうことだと思った。毎日違う演目を上演したようだけど、この日しか行けなかった。俳優の演技からもたらされる情報が少なく、のめり込まずに観る、観察するように観る、この引いた感じが好きだった。「湯気、道くさ」とか「笑い声」とか、劇中の当事者にとっては大問題だったり、ただの日常だったりすることが、観ている人にはおかしく思えてしまうような距離感が好きだった。

12月3日犬の心単独ライブ『新宿ひと吠え』@ルミネtheよしもと

ルミネtheよしもとは漫才のための劇場設計だと思う。コントを観るには客席に傾斜が少ない。椅子に座って会話が進むコントなんて、場所によっては演技が見えない。いいなと思う劇場で感じる、空間のギュッとした感じもまったくない。犬の心の単独ライブ『新宿ひと吠え』は、面白かった。けれども、これまでの素晴らしい単独ライブの数々を思い起こすと、とても物足りなさを感じてしまう。コント1つ1つの完成度だけではなく、体験として「とても良かった!」と感じる満足には、一つの公演としての完成度が必要なのだ。フライヤー、パンフレット、映像に至るまで、一つの公演として一貫したデザイン。劇場という場所のもつ密度!複数公演!こういったことは複合的に公演としてのクオリティを格段に上げていると思う。そして犬の心はそれだけの人がかかわって作り上げる公演で観る価値のある数少ない素晴らしいコントを作っている。私はタレントの知名度でチケットを払うのではなくて、公演としてのクオリティの高さに5,000円でも6,000円でも払いたいと思います。

9月〜12月10日は他にもたくさんのものを観ました。映画は4本、演劇は26本、お笑いは24本。つまらなすぎて悪口を書きたい衝動の公演もたくさんあります。でも、そんなことを書くべきなのか、迷って書かずにいます。好きだから書ける「面白くなかった」ではない、好きでもないし面白くなかったという感想を書くべきなのかどうか。(さすがに悪口を書かないまでも。)

キングオブコント2016決勝の感想

昨年は、決勝のスタジオの雰囲気が緊張感で溢れていてとても笑うという雰囲気に思えなくて、テレビ越しに観ていて地獄のようだったけど、今年は去年に比べて、和やかで楽しい様子になっていたように思った。でも、2014年までのキングオブコントの決勝とは全然違うものになったのだなぁと改めて思った。

2014年までは、セミファイナリストたちが審査員として客席にいたので、二層の反応があった。コントの作り手の反応と、一般の観客の反応。昨年からは、セミファイナリストたちが客席にいないので、一般の観客の反応しかない。今年は特に、コントの内容が不気味だったり、異常な台詞を放ったりすると、観客から悲鳴が上がるのが目立った。コントは、笑いがなければその使命を全うしないので、その時それを観ている観客が笑わなければ意味がない。それは芸人自身は百も承知で、だから「営業ネタ」という呼称のネタがあるのだろう。キングオブコントの観客は「営業ネタ」向きの観客に寄ったと思った。しかし、これが”一般の観客”なのか…受け入れがたいけれど、これがテレビの求める観客なのだろう。審査員の松本さんが、付けた得点についてのコメントを求められたシーンで度々「うけてた」かどうかに言及する場面があった。スタジオにいる、この観客にうけること、それがこの番組、2015年以降のキングオブコントの評価の基準なのだ。

日々、現役でコントを作り続けているセミファイナリストたち自身が面白いと思うコントが選ばれるキングオブコントはもうなくなった。

準決勝を二日間観に行っていて、決勝に進んだ10組の選出は、実際に観た体感と大きく相違なかった。(準決勝を見に来る観客と決勝でスタジオにいる観客とは、全然ちがう。決勝の観客と準決勝の観客では準決勝の観客の方がこれまでのセミファイナリストの反応に近いと思う。)ライスの優勝も本当に良かった。でも、これだけ延々と述べる腑に落ちなさは、「もっと面白いはずなのに」という、全然響かない観客の反応への不満。

セカンドステージでのジャングルポケットとライスの点数について、設楽さん以外の審査員は、二組の点差を1点にとどめ、松本さん、大竹さんはジャングルポケットに、日村さん、三村さんはライスに軍配を上げていた。設楽さんだけが、ジャングルポケット88点、ライス94点という6点差をつけた。設楽さん以外の4名は、自分の好みを消極的に表しどちらが優勝であるかは5人の合計点に任せ、設楽さんは個人の評価を積極的に点数に表した、というように見える。ライスは2本とも面白かった。ライスが優勝して、本当に良かった。

しずるの出演順がライスと逆だったら、しずるが優勝していただろうと思った。これに関しては不運だと思った。一組目が出る前に、前説とは別に、過去の優勝者によるエキシビジョンが2本くらいあれば多少不運が解消されるのでは、と夢のようなことを思った。ラブレターズも後半だったら順位はもっと違っただろう。もし、なんてのは言ったって意味が無いけど。それより、それこそ、ラブレターズはスタジオでうけていたのに、うけていなかったような印象になっているのは納得いかないなぁ。かもめんたるが2本目を披露することになった時、「もうこの場所でかもめんたるはうけないな。」と思ってしまった。かもめんたるの2本のコントは、誰よりも独創的で唯一無二で一番面白かった。かもめんたるのコントの面白さが共有できない観客に幻滅した。かもめんたるのコントが元々好きだけど、だからといって、かもめんたるの、または他の特定の誰かの優勝を願っていたわけではない。ただ、それぞれの面白さが響かないこのキングオブコントに熱狂できなかった。

セカンドステージに進んだジャングルポケットタイムマシーン3号のコントがとにかく好みに合わなかった。古臭くて手垢のついた茶番劇だと思ってしまった。タイムマシーン3号の1本目のコントは、準決勝でやってたオチと変わっていた。準決勝では、後半、関が周りの人間を次々に小銭に変え、山本も小銭に変えられそうになるが、山本は持っていた鏡に反射して小銭になることから免れ、一方、関自身が小銭になってしまう。このシニカルさが良かったけど。オチで石貨が出てくるのはダサかった。

もう、これまでのキングオブコントに幻想を抱くのは今年でやめてしまおうと思うので(本来去年で諦めるべきところを、こんなにも未練がましく綴ってしまった…)、キングオブコント2016は、なんとかDVDになって、2015も今更でもいいのでどうにかしてDVDになって、DISK2には準決勝のコントを収めてほしいな。

キングオブコント2016準決勝2日目(9月9日)

キングオブコント2016準決勝2日目(9月9日)

かなり前の方の席で見た。席の位置のせいか全体的にウケてたのかどうかわかりにくかった。1日目が眠れないほど面白かったというのもあるけど、あまり面白いと思えるものがなかった。

※ネタバレ有

アインシュタイン 先生と女子生徒
アンガールズ 除霊
インスタントジョンソン 知ったかぶり
うしろシティ 自転車
・エンペラー ナンパ
・鬼ヶ島 性別
かまいたち 誘拐
祇園 パ行
・キュンキュンパフェ 物理
グランジ 電力
コロコロチキチキペッパーズ ソーラン節
ザブングル 先生の不倫
GAG少年楽団 田舎の同級生
・しゃもじ ボタン
ジャルジャル 友達の名前
ジャングルポケット 会議前
・ジュリエッタ 廊下で衝突
・シンプル 四コマ漫画
・ずん 営業
セルライトスパ 空手
・たんぽぽ 告白
・チョコレートプラネット マジック
天竺鼠 家族
・トップリード 娘さんをください
・ニッチェ 友達の妹
・パーパー カップル
・馬鹿よ貴方は 漫画喫茶
・ハナコ 恋愛シミュレーションゲーム
・バンビーノ 測量
藤崎マーケット 窓から…
モンスターエンジン 怪物
夜ふかしの会 ご飯
ラブレターズ 野球拳
レイザーラモン ドナルド・トランプ
・ロッチ レイを買いに来た客
・我が家 喋り方
・わらふぢなるお スーパーの売り場

★マークは今日一番面白かった、☆マークは特に面白かった。(準決勝に進むほどの方々は、好みの差はあれ、どれも面白いです。)

ラブレターズ

楽しい!楽しい時間を会場で共有したー!という一体感があった。終わるやいなや拍手が湧き出てくる感じで、これも会場全体が面白かった!という雰囲気に包まれていたと思った。

GAG少年楽団

もうすでに決勝進出者が決まってしまったので、その結果を含めで感想を書いてしまうけど、いつもウケるところが全部ウケていて完璧に終わるのに、なかなか決勝に進めていないのを見て、不思議。会場も割りと沸いていた感じがありました。きれいに終わりすぎるのかなとか思う。

トップリード

畳み掛けが面白かった。会場にいる観客の心を掴んでいた感じがありました。個人的にも割りと面白かったです。だけど、多少引いた目線で見てしまうと、「お約束」的展開の畳み掛けに乗れないかもなと思う。トップリードはライブでもよく見るし、好感があるので、こんなことを書くのは気がひけるけど、その乗れない場合の感じっていうのは「全く初めて見に来た劇団がハートフルな演劇を上演していて、熱演する役者と、元々のファンと役者の知り合いが多いのかなって思うような客席の盛り上がりに若干引いてしまう感じ」に似ているかもしれない。それは一方では、引いてしまうということだけど、一方では熱狂させる魅力があると言える。そういう心の掴み方がだめなのかというとそうではなくて、今回の会場にいた審査員の人の基準からは外れた、ということなのかもしれない。

藤崎マーケット

最初のコントの導入シーンがすごく好きだった。リビングのソファに座って、テレビをザッピングして気に入った番組がないからスマホいじる、みたいなシーン。この何気なさに期待感が増した。期待感が増したのちに起こる出来事も面白かった。

キングオブコント2016準決勝1日目(9月8日)

キングオブコント2016準決勝1日目(9月8日)

上手の後ろの方の席で見た。

※ネタバレ有

相席スタート 彼女の元カレエピソード
・アキナ 大将の行動
阿佐ヶ谷姉妹 定食屋の姉妹
・犬の心 特にダメな場所
・インポッシブル 焼き芋屋と女
エレキコミック アイドル志望のコンビニ面接
かもめんたる 遠距離恋愛
・高校ズ 演劇部の即興芝居
・ザ・ギース ミュージカル俳優
ジグザグジギー 定食屋の達人
★しずる 刑事の現場突入
ゾフィー ペンション殺人事件
・だーりんず 息子の結婚前夜
タイムマシーン3号 カツアゲ
・ダブルブッキング タクシー
・チャーミング 安い飲食店
チョップリン ひいじいちゃん
・TKO プロ野球の木本選手
・トンツカタン 部屋にGが出た
★ななまがり 左利き
・ななめ45° エロ本で助かる
・ニッポンの社長 母のパート先
ニブンノゴ! 治安が良いのか悪いのか
・ムニムニヤエバ エロ漫画で見た展開
・やさしいズ 彼女の作った歌
・やさしい雨 マッサージ店
・や団 居酒屋アルバイトの喧嘩を仲裁
・ライス 脅されてるのに
ラバーガール 先輩の泣いてる理由
・ロビンソンズ ブスのダメ出し

★マークは今日一番面白かった、☆マークは特に面白かった。(準決勝に進むほどの方々は、好みの差はあれ、どれも面白いです。)

しずる

刑事ものの定石とも言えるような台詞や展開、でも、その土台となっているのはナンセンスな状況。めちゃくちゃ面白かったし、会場が一体となって盛り上がった。コントの終わりは、溶暗しながら「面白かった!」という会場の一体感から自然と拍手が湧きいでる感じがあった。決勝に進んでテレビの仕事が一層増えても、とにかくコントが面白いので、単独ライブは最低でも年に一回、最低でも5ステージくらいはやってほしいです!!

ななまがり

最初のシーンから、状況も台詞も言い回しも可笑しくて、晴天の霹靂だった。一発目に繰り出されたパンチの威力!耳に残る強フレーズ。バカバカしくて最高!今年、単独ライブに行かなかったことが悔やまれた。

かもめんたる

決勝に進んだので、ネタバレしてた感想消しました。

ザ・ギース

高佐さんは、とても器用でそつがないといえばそつがないのだけども、なんだか、そのスキルに反して、ちょっとハラハラするようなアンバランスな魅力がある。その魅力とこのコントはマッチしてるように思った。

チョップリン

小林さんの得体の知れなさが際立ってた。怪異であることは、近寄りたくないのと同時に惹きつけられもする、みたいなコント。

ライス

脅されてるのに緊張感ないなぁ、なんて観ながら初めは思ってしまったけど、そんな見方は無粋だった、って思わせられるほど、ナンセンスさに巻き込まれた。

7月、8月に観たもののこと

観たものを羅列して、感想を書くことも、興がないなぁと思い始めたので、見て面白かったものを個別に書くのと、ちょっと何か残しておきたいことについて、ある程度まとめて書くことにしようかと思った。(7、8月はナショナル・シアター・ライヴを2つ、コントの単独ライブを8つ、漫才の単独ライブを1つ、演劇を14本、映画を4つ、お笑いのライブを7つ観た。)

 

7月は、かもめんたるがやっている、劇団かもめんたるの公演『ゴーヤの門』も観た。シーン一つ一つが抜群に面白い。けれど長い尺で一つのまとまりのある演目として観た時に、少し物足りなさも、感じる。それから、たくさんの人が舞台上に居るシーンの演出はところどころ違和感があった。私は、演劇は、生身の人間が、舞台上であたかも今そこで起きているかのようなコミュニケーションを再現する、ということに面白さがあると思っているので、それぞれ、リビングに自然と人が集まってくるシーンなどで、舞台上のその場所に居ることを指示されたかのような座り位置とか、みんなが一斉に立って舞台の前の方に集まって話すシーンとかは、それぞれの役の動きに必然性を感じなくて、ちょっと変だなぁと感じた。個性的な台詞が多くて面白かった。石田さんが、一人でるいと君相手の妄想するシーンとか、るいと君のお母さんが光太郎に「抱いて」って言ったこと、そのことを光太郎が皆に言っちゃうところまでの一連のシーンとか、すごく声に出して笑えたし、頭が冴え冴えするような面白さがあった。作・演出の岩崎う大さんが、本気で演劇に…というか、長尺の演目に取り組み始めたら、演劇シーンは変わるかもしれないな、とも思う。この『ゴーヤの門』という演目、というか、劇団かもめんたるについて、もっと普段演劇を観ている人が観た時の感想を聞いてみたい。否定的であれ、肯定的であれ、どのように観るのだろう。

マンボウやしろの告別ショー2016『サイコロ出鱈目』という公演も観た。この公演は、用意されたネタに、誰が出演するかを、サイコロで決めるというもの。舞台上に6つの扉があって、6人の出演者が、扉の後ろに待機。サイコロを振って出た目の扉が開いて、出演者が登場し、予定された演目が始まる。言い換えれば、サイコロの目以外の演者は、出られない。そういうシステムの公演だとは、始まるまで知らなかったけど、劇場に入って、この6つの扉が設置された舞台を観た時、無条件にとてもわくわくした。サイコロを振って演者が登場するまでの一連の演出がかっこよかった。マンボウやしろさんという人を私はよく知らなかったので、観てみた公演。出演者に、しずるの池田さん、犬の心の押見さんがいるのも、観に行こうというきっかけになった。しかし、この公演後しばらくして、マンボウやしろさんは、芸人を引退すると発表した。今後は、脚本・演出家として活動するらしい。辞めるわけでなくなにか作り続けるなら楽しみだ、と思う。

7月末から8月は、単独ライブをたくさん観た。ラブレターズの60分ライブ、GAG少年楽団コマンダンテの単独、別個感想を書いたしずる、チョップリンの単独ライブ。もうすぐというか明日から二日間、キングオブコントの準決勝だ。キングオブコントの準決勝は、賞レースの準決勝なのだけど、これまでの一年間で一番良いコントだと演者自身が思うものを上演する公演と言い換えられる。「良い」というのは、もちろん一番笑えるものであるということを含むけど、それに加えて何をもって良しとするかをそれぞれの演者がどう捉えているかもなんだか感じられるような気もする。今年は、準決勝の段階で、さらば青春の光とニューヨークが敗退していたので驚いた。誰が決勝に進むのか、楽しみだ。個人的には、チョップリンラブレターズが進んだらいいな〜と思う。

2016年8月7日(日)、チョップリン単独ライブ「素人の非日常」

2016年8月7日(日)、夜は、新宿角座チョップリンの単独ライブ「素人の非日常」を観た。とても面白かった。チョップリンは大阪で活動しているので、東京で観る機会が限られている。東京では一回きりの公演。

便宜的に勝手にコントのタイトルをつけると、「かくれんぼ」「ヤクザ」「万引き」「刑務所の面会」「ダンスの練習」「お笑い芸人」「神社」「捨て子」の8本だったかと思う。忘れているのがあったらすみません。

一本目のかくれんぼのコントからほぼ全編、小林さんの異常な存在感が際立っていた。

神社のコントは、明転すると、上手に赤い鳥居が現れている。下手では、野球ボールを探している小学生の西野。すると、小林扮する小汚い神主らしき面妖な人物が鳥居の向こうに現れ、か細い声で西野に、鳥居をくぐるようにしつこくいざなう…というコント。コントの構成は、チョップリンの「ひいじいちゃん」というコントに近いかたちだ。この神主は、本当にこの世のものなのか、なんなのか、得体が知れない。はじめは、なぜそんなに鳥居をくぐらせようとするのか、わからないのだ。まるで異界へ手招きしているかのよう。この神主は鳥居の外には出られないのではないか…そんなことまで思ってしまう。SFなコントではないのはわかっているのだけど、そんな風な不思議な魅力もあった。本当は、賽銭をせびっているだけなのだが。でも、子どもに賽銭をせびるなんていうしみったれた感じ、もしかしたら八百万も神がいたら、一人くらいこんなのがいるんじゃないかと思わせる。

小林さんの演じる人物のヤバさ・怪異さが抜きん出ているのは、観客が、この人は本当にこういう人なのではないか…、と一瞬でも疑ってしまうような自然さからだと思う。懸命に演じて異常さを装っているのではなく、着の身着のまま出た、みたいな軽やかさだ。あんな風に、怪異そのもの、というような様子で舞台に立てる人が他にいるだろうか。

怪異だけど、畏怖しない。あやしいけど妙な親しみやすさがある。田舎の田んぼの畦道で歯の抜けたおじいちゃんに微笑まれるような不思議な愛嬌があるのが小林さんです。

今年のキングオブコントチョップリンに期待大です。

8月7日(日)、しずるの単独ライブ「be born baby」

2016年8月7日(日)、お昼にしずるの単独ライブ「be born baby」をザムザ阿佐谷で観た。(じつは5日にも観た。)

ロックのライブに行くというコントとパチンコのビギナーズラックのコントが特に好みだった。全部面白かったけど、好みで言うと、この二つ。下記、ネタバレがあります。

ロックのライブのコントと、ビギナーズラックのコントは、会話劇が土台になっている。どちらのコントも、初め、一人は本音を隠して会話をしている。ロックのライブのコントだと、村上、ビギナーズラックのコントだと池田が、本音を隠している。ロックのライブのコントの村上は、相手の反応を伺いながら、自分への批判を避けつつ、自分の味方に引きこもうと思っている。会話の中での隙につけ込めるところはつけ込んでみたり、もう少し攻められるかな、と相手に踏み込んでみたりする。ビギナーズラックのコントだと、本音を隠している、というほど自覚的ではないけど、池田は村上に腹が立っていて、そのことを村上に直接的には言わないでいる。でも、言葉の端々にちくちくと悪意を込めている。それがだんだん発露していく。村上は自分への苛立ちを指摘しないではいられなくなる。村上は、池田に、本音はこうだろ、とつきつける。

他人に何かを隠していること、相手が本音を隠して喋っているらしいこと、隠していたことが明るみになって変わる関係、取り繕う様子、そういったものが、過剰すぎる表現ではなく、いかにも現実のコミュニケーションにありそうなレベルで表現される。自然な状態を演じるということは、繊細な演技力が必要なことだと思う。また、「自然な演技」というのは、「ドラマチックさが欠ける」とイコールではないと思うのです。二人の間に流れる微妙な空気の再現力が群を抜いていると思う。そういう再現を見るのはとても面白い。また、このコントを観たい。またどこかで観られるかな。コントにたっぷり尺があるライブでしか観られなさそうかも。

こういうコントばかりなのかというと、そうではなくて、全部で8本のコントがあったけど、他の6本はまたちがった面白さ。

例えば、「アサヒ荘迷コンビ物語」は、めぞん一刻を思い出させるような、古いアパートの管理人と住人の独身の青年とのコミカルなやり取りを描いたコント。コントのオープニングに「アサヒ荘迷コンビ物語」というタイトルと、古アパートのイラストの映像が出され、音楽は村下孝蔵の「陽だまり」(めぞん一刻のオープニング)。物語はどこかにありそうな懐かしい気のする展開、骨太な構成。ベタなやり取りをコミカルに描いてキャッチーで楽しいコント。

「刑事の現場突入」のコントは、二人の刑事が犯人の潜伏している廃ビルに張り込み、今しも突入しようとしているところ。そんな折、別の場所で犯人が逮捕されたと連絡が入る。しかし…という、ナンセンス系コント。(※キングオブコント前だし念のため重要なネタバレ消しました。)刑事ものの定石とも言えるような台詞や展開があるが、その土台となっているのはナンセンスな状況。二人の演技が、特に村上さんの演技が、熱演で緊迫感があるので状況に反してなおのこと可笑しい。

他の4本も面白かった。

上演されたコントは、「学校の不祥事の謝罪会見」、「ロックのライブ」、「爆弾犯の説得」、「ピザ」、「ビギナーズラック」、「銀行の金庫破り」、「刑事の現場突入」、「アサヒ荘迷コンビ物語」(全部便宜的に名前を勝手につけた)。(文章中、一部敬称略しました。)

しずるのコントを観て、面白くなかったことがない、というのは言いすぎかな…

出ているDVDも全部面白い。

 公演情報
日時:2016年8月5日(金)19:00開演、8月6日(土)14:00開演 / 18:00開演、8月7日(日)13:00開演 / 17:00開演 会場:ザムザ阿佐谷 料金:前売4000円 当日4500円

↓去年初めて観た単独ライブ『吉祥寺マチェーテ』のことは下記(かなり詳細にネタバレしているので留意ください)

savoy-truffle.hatenablog.com