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THE MANZAI 決勝大会感想

どのコンビも面白かった。博多華丸・大吉の優勝も納得の結果だった。本当に面白い漫才師は劇場にいるという大吉さんの発言が刺さった。こういった大きな賞レースは、若いこれからのひとたちのものだと思っていたけれど、それだけではなくて、ずっと面白い漫才を続けていながら、漫才師としての評価がまだ足りていなかった人たちのものでもあった。

感想は、グループごとに書いてみたいと思います。

Aグループ(2丁拳銃エレファントジョン、アキナ、磁石)

審査員票もエレファントジョンとアキナで票が割れていたけれど、私もこの二択だと思った。その上でエレファントジョンかなと思っていた。総合点で同点に思えた二組を、じゃあ何によって決めようかなと思った時に、「笑いどころの数の多さ」という点で見て最終判断を下すとしたら、エレファントジョンの方だな、と思ったからだ。「わかりやすさ」という言葉を用いて、審査員席では所感が述べられていたことは興味深かった。「わかりやすさ」とは一体どういうものを指しているのだろう。僅差でアキナが勝ったのは、この「わかりやすさ」という点なんだろうか。審査員の評からはその印象を受ける。私はアキナとエレファントジョンを比べた時に「わかりやすさ」の差があるように思えなかったので、そもそもこの場合の「わかりやすさ」とは何なのだろうと考えてみた。ここでの「わかりやすさ」というのは、このグループにおいては「ネタ全体を貫く物語を共有しやすい」ということなのかな、と思う。

アキナは「野球部を辞める部員を説得するキャプテン」という物語を設定したネタだけど、この物語は「きっと辞める部員に熱い言葉をかけるだろう」とか「きっと辞める部員は本当は野球が好きなんだろう」とか「お約束」的に思い描くことができる、共有度が高いものなんじゃないかと思う。このネタの面白さのポイントには、前述の、想定される物語からの逸脱がある。一方、エレファントジョンは、「昔太っていた」というエピソードを語り、発される言葉に対する逸脱が笑いのポイントになっている。アキナは、視聴者と前提として共有されている物語からの飛躍だけど、エレファントジョンは、繰り出される言葉を瞬時に共有して意味を飛躍させる*1ので、多少、能動的に見なければならないという差が出る。

このことが「わかりやすさ・わかりにくさ」で言い表されたことなのかな、と思った。

エレファントジョンは、THE MANZAIの認定漫才師お披露目の特番で見たときは、ボケの森枝さんの相槌が、ツッコミの加藤さんの喋りに重なって、ちょっとノイズの多い印象だったのだけど、今回はすごくスッキリしていて聞き取りやすかったし、丁寧だった。森枝さんの「シャレの多い鬱陶しいオジサン」というキャラクターは共有しやすい人物像だと思う。

Bグループ(トレンディエンジェル、馬鹿よ貴方は、囲碁将棋、学天即)

このグループは、トレンディエンジェルの圧勝だったけど、私はトレンディエンジェルと学天即の二択だと思った。もちろん、トレンディエンジェルは文句なく会場を湧かせたのだけれど、学天即の完成度の高い漫才を見終えたあとに比較すると、トレンディエンジェルは、台詞が聞き取りづらかったり、発話が重なったりとごちゃっとしていた印象があったので、どちらに軍配があがるか判断しかねた。結果から振り返ると、このグループはネタの順番や会場の空気が結果を非常に左右したのだなと思うし、トレンディエンジェルはテレビ越しに見る以上に会場の心を掴んだのだなと思った。

個人的な好みとしては、馬鹿よ貴方はが一番好きだった。一言で表すなら「不穏」。でも決して難しい笑いではなかったし笑いどころは確実に弾けていた。囲碁将棋は攻めの姿勢で選択したネタだったのかなと勝手に想像するけれど、馬鹿よ貴方はの後というのはちょっと相性が悪そうなネタだと思った。学天即のツッコミの奥田さんは、中川家の礼二さんを彷彿とさせた。(似ているということにマイナスな意味合いは無い。)安定感があった。

Cグループ(和牛、博多華丸・大吉、ダイアン、三拍子)

このグループもAグループと同じく、審査員票の割れていた博多華丸・大吉と三拍子との二択かなと感じながら見ていた。やはりワイルドカードから勝ち上がったという勢いが三拍子にはあったので、そこが加点されるのかなと画面越しに思ったが、博多華丸・大吉の方が芸の卓抜さによって勝ったのだなと思った。

個人的には和牛が好きだった。理屈を通す漫才。「頑張っていきましょうと言ってやってますけども…」という言葉に対して「頑張っていきましょうなんて一度も言っていない」とひたすら理屈でしつこく正す。 ワイルドカードの感想記事でも書いたけど、私は漫才の好みとして、ツッコミがツッコんでいるのに、その発言をなかったことにしてボケを連発するスタイルよりも、ツッコんだ言葉を受けた上で次のボケを発信する、会話が成立しているタイプの漫才が好きなのだけど、和牛は理屈を通そうとするのだからもちろん会話になっている。面白かった。

決勝(アキナ、トレンディエンジェル博多華丸・大吉

決勝については特に感想はなかった。博多華丸・大吉のツカミから、もう彼らが優勝だと思った。本当に面白かった。話芸の巧みさがあった。人柄にたいする好感と信頼があった。

 

読み返してみたら、ものすごく長文な感想になっていた。気が向いたら、細かいところが気になりだして加筆修正するかもしれない。

*1:エレファントジョンのボケはいわゆるシャレが多い。シャレとは言葉のレトリックだ。ひとつひとつのボケを修辞法ごとに分類してみたくなるけれども、そんな解体はだれもよみたくないだろう…