うしろシティのコントの特徴と会話の面白さ

うしろシティのコントが面白い。少し前にYoutubeで他のコンビのコントを見ていた時に、ふと、うしろシティというコンビ名は知っているけれど、コントを見たことがないな、と思い検索してみた。キングオブコント2013の決勝での結婚の挨拶のコント(単独ライブのDVDでは「娘さんを下さい」というタイトル)がすごく面白くて、興味を持った。会話が面白い。構成もしっかりしている。それでDVDを見てみた。ほとんど全て面白くて驚いた。

うしろシティのコントの一つの特徴は、”ベタ”の調理が上手いことだと思う。よくある設定を持ってきながら、新しい視点で展開する。例えば「娘さんを下さい」は、結婚したい相手の父親に結婚の許可を貰いに行くというもので、設定自体はよくコントで用いられているものだと思うけど、結婚の許可を貰いに来た青年が巨額の貯金を持っているという特殊な設定を背負っていて、会話が進むにつれてそのことがわかってくる。”ベタ”な設定だけど、登場する人物がもしこういう設定を持ち込んだらどう展開するのか、という面白さなのだ。*1 だからその面白さは、人物同士の会話が発展することによって展開する。会話上での情報の出し方も、相手の発言に対する反応の仕方もリアリティがある。うしろシティのコントは会話が面白い。会話が面白いコントというと、私は特に「バンドやろうぜ」(DVD『うれしい人間』に収録)が会話が面白いコントだと思う。別々の高校に進学した同級生が、文化祭でバンドをやろうという話をするコント。ただバンドをやろうという話をしているだけで、設定や登場する人物が特殊というわけではない。19分あるのだけど、それが会話の面白さでのみ構成されている。二人の話が展開するにつれて、阿諏訪さんの演じる「ちょっと痛い人」という個性や、金子さんの演じる「空気を読みつつ駆け引きする人」という個性が、だんだん見えてくる。会話の中から、この登場人物たちが中学生のころスクールカーストのどの階層に位置していたのかということもだんだん見えてくる。うしろシティのコントはあくまでもリアリティを失わさせず会話を成立させるものが多い。

「バンドやろうぜ」というこの長尺コントは、第4回単独ライブ『うれしい人間』のDVDに収録されていて、私はこのDVDがうしろシティのDVDの中でとりわけ好きだ。「少年」「野球部の危機」「張り込み」「バンドやろうぜ」「喧嘩のやりかた」「バイトの新人」「病院」「娘さんを下さい」「監禁」というコントが収録されていて、それぞれ違った面白さがある。「娘さんを下さい」は前述したように”ベタ”にもう一つ新たな設定を持ち込んで展開させる面白さがあり、「バンドやろうぜ」は会話に特化した面白さがある。「野球部の危機」というコントもすごく面白くて、これは”メタ”的視点の面白さだ。人数が足りなくて廃部寸前のところに、阿諏訪さんの演じる「いかにも野球部に入りそうな人物」が現れる。コント内の虚構の世界でもこの人物は、私たちが物語を眺めるときに感じるのと同様に「いかにも野球部に入りそうな人物」として金子さんに扱われる。こういった”メタ”的視点を用いて、阿諏訪さんの演じる人物の異質さ(痛さ)みたいなものを、金子さんが解体していくタイプのコントも他にもいくつかあって、とても面白い。

ところでこの「バンドやろうぜ」のコントは、この単独ライブ以外でやったことがあるのだろうか。私はDVDで見たので、もう一度どこかでやるなら、どうしても生で見たいと思う。渋谷コントセンターに出演しないだろうか。するならこのコントをやってほしいなぁと思う。

うしろシティは月一で「うしろシティのライブ」というライブを行っている。コンビのトークと、ネタと、企画と、一ヶ月のスケジュールを振り返るコーナーによって構成されているようだ。すでにすっかりファンなので、しばらく続けて見に行きたいと思っている。土曜日深夜のTBSラジオ・デブッタンテも楽しみだ。12月21日(日)に草月ホールで『デブッタンテの会』という、ハライチとやっているこのTBS深夜ラジオのライブが行われたのだけど、そこでのうしろシティの新ネタのコントがすごく面白かった。好きなコンビの新ネタをライブで見て、しかもすごく面白いという、こういう場面に立ち会えたことにとても興奮した。2015年も単独ライブをやるのだろうか。すごく見に行きたい。楽しみだ。

 

以下 時系列順に簡単なまとめ

2004年 スクールJCA13期入学(阿諏訪さん)

2009年 コンビ結成

2011年10月 DVD「街のコント屋さん」発売
 タイマン/この一球転校生道案内イベント居酒屋最後の試合ローマ旅行電車友達お見合い卒業バーベキュー

2011年10月 単独ライブ「ヘラヘラ」新宿角座

2012年6月 第2回単独ライブ「走ってるのかと思った」(DVD『うれしい人間』の特典ディスクとしてDVD化)
 食い逃げ上京ばんそうこう立つレッサーパンダ先生との別れ美容室大丈夫寿司修学旅行

2012年7月 splash!! vol.4 インタビュー掲載

2012年9月22日 キングオブコント2012決勝 1st「転校生」 2nd「メンツ」

2013年1月 第3回単独ライブ『アメリカンショートヘア』
 卒業式CHANGE持ちこみ不動産屋ヒーローサッカー部先生さようならヒッチハイク上京人探し芽生え特別収録 漫画特別収録 彼女と別れた

『アメリカンショートヘア』DVD発売時インタビュー 


うしろシティ スペシャル・インタビュー « CONTENTS LEAGUE

2013年2月27日発売 『cafeと喫茶店』(さらば青春の光との合同DVD)
メンツ美容室太陽

2013年6月10日更新 バチバチブログ - フジテレビ (参考)

2013年7−8月 第4回単独ライブ『うれしい人間』
 少年野球部の危機張り込みバンドやろうぜ喧嘩のやりかたバイトの新人病院娘さんを下さい監禁

『うれしい人間』DVD発売時インタビュー 


2013年伸び率ナンバーワン芸人「うしろシティ」 単独ライブDVD『うれしい人間』が発売に | テレビファン・ウェブ

ピクトアップ web版「芸人、かく語りき」 うしろシティ後編

2013年9月23日 キングオブコント2013決勝 1st「上京する阿諏訪くん」 2st「娘さんを下さい』

2014年5月 第5回単独ライブ「それにしてもへんな花」
 契約/5分の遅刻彼女喫茶店の常連放課後銀行襲撃真面目な清掃員りんご旅行逃走

『それにしてもへんな花』DVD発売時インタビュー 


うしろシティ インタビュー « CONTENTS LEAGUE

*1:雑誌『splash!! vol.4』のインタビューで、ネタ作りについての流れで阿諏訪さんが「金子の案は感情ではなく設定ですね。『このあるあるをどうずらす?』とか。」と言っていたけれど、あるあるをどうずらすか、というのは、このベタの展開の仕方のことだろうか?もう少し詳しく知りたい。