『徳井と綾部の漂流日記』というライブが面白い

(2015年5月22日のライブについてはこちら 『徳井と綾部の漂流日記』(2015年5月22日)の感想 - KBLOG )

 

『徳井と綾部の漂流日記』というライブが面白い。

この『徳井と綾部の漂流日記』は隔月で開催されるらしい。今回は1月13日(火)21:00から、渋谷のヨシモト∞ホールで開催。

このライブは「若手とトークをするライブがしたい」という話からスタートしたものだそうで、ホストの平成ノブシコブシ徳井さんとピースの綾部さんはNSC東京校5期生の同期。テレビタレントとしても既に認知度の高い二人なのではないかと思うけれど、そんな二人が毎回2組よしもとの若手を招いて45分ずつトークをする。1回目に招かれたのはニューヨークとおかずクラブ(ともにNSC東京校15期生)。徳井さん、綾部さんとは10期下の後輩です。2回目の今回のゲストはテゴネハンバーグ(NSC大阪校30期生)とやさしいズNSC東京校16期生)で、テゴネハンバーグは8期下、やさしいズは11期下。彼らは主にヨシモト∞ホールを拠点とした、irodori East ランキングシステムという枠組みのライブで活動中の若手。

つまり、ホスト側の芸歴15年目の徳井さん・綾部さんに、芸歴5年前後の若手のコンビがネタを披露し、ともに45分のトークをするという、すこし特殊なライブ。そして、ホスト側の二人とゲストは、しっかり絡むのがほとんど初めて、というケースが多いようで、自己紹介的なネタの披露を受けた上で、「一体どんなコンビなのか?」という切り口で若手と話していく。徳井さんはお笑い好きだからなのか、どういう芸人に影響を受けたのか、ということへの興味や、ネタのスタイルについての分析的な言及があって面白い。綾部さんは、人との接し方・ふるまい方への注目というか、その人がどういうコミュニケーションを取るタイプなのかという点への注目が高いように思う。ホスト側の興味のバランスがすごくいいんじゃないかと勝手に思っています。そしてどういうわけか、このライブは、徳井さん・綾部さんの二人がジャングルで彷徨っているさなか、若手の芸人に遭遇する、という設定が敷かれている。

今回のゲスト・テゴネハンバーグは、大阪校卒業の芸歴7年目(コンビ歴は2年目)、奈良県出身の、歯科大を4年で中退した弓場と、中退させた松村の中学同級生コンビ。プリマ旦那と同期。松村さんは物怖じしなさそうで、弓場さんはおおらかそうな、二人とも人付き合いにそつがなさそう印象のコンビ。ネタは漫才で、ターザンが題材。ジャングルの舞台セットに絡めて、「ターザン」のネタがやりやすそうだと言及したことが、徳井さん・綾部さんから「この状況でそんな間をしっかり取ったツカミをねじ込めるのは度胸がある」と絶賛を受けていた。二人とも、漫才が堂々としていて、自信がしっかりありそうなので、なんだか安定感がある。ガキの使いの「七変化」に出たいという松村さんに徳井さんは「言っていたら出られる。怖いから断る人もいるくらいだから」とのこと。また、テゴネハンバーグの二人は同居をしているそうで、これには徳井さん・綾部さんともに声を揃えてコンビで同居はうまくいかない!と主張。また「誰に憧れて芸人に?」という質問に、松村さんが「ピースさん、ノブコブさん…」というと、「そういうのは本当にいいから」と徳井さん。再度の質問には「ピースさん、ノブコブさん…笑い飯さん」という回答。同じ奈良県出身の笑い飯が憧れだった様子。

後半のゲストは、やさしいズ。動物のマスクを獲物に見立てて、「食料を取ってきました」と、ジャングルで彷徨っているという設定に乗った張り切ったコント調の登場に、若手らしい立ち居振る舞いのコンビかと思いきや、異色だった。他人への振る舞い方に敏感な綾部さんは、やさしいズがステージに立って早々、佐伯さんの雰囲気に「怖い!」と反応。ネタはコント。現代国語の追試が解けないというコント。*1 面白かった。ツッコミ不在のスタイル。やさしいズは、28歳童貞の佐伯と、個性的な風貌な"たい"(苗字、田井と書くらしい)のコンビ。一見、たいさんの方が個性的で独特なように見えるけれど、話をしてみると佐伯さんの方が喋り方や反応が独特。綾部さんの指摘によると、喋っている時の動きや、ジェスチャーがちょっと変わっている。

やさしいズは二人とも、1985年生まれの世代なので、NSCに入ったのは25歳の時ということになるので、それまで何をしていたのか、という話になった。佐伯さんは高校を卒業して3年間建築会社に勤務していたけれど、ハードで辞めたとのこと。徳井さんの「3年?まだNSCに入るまでまだあるね」との指摘に、佐伯さん「次は声優の養成所に入って、少し仕事をして…1年くらい…」、徳井さん「まだあるよね、その後は?」という調子で、なんだか取り留めもなく、どのタイミングで芸人を目指そうとしたのかきっかけがはっきりしない様子に、クズなのではないかと徳井さんが看破。また、童貞であることがわかり、綾部さん「なんで?」「キスはしたことあるの?」とこれまでの恋愛経験を掘っていく。一見佐伯さんの方がまともそうに見えていたのだが、「コンビでまともに見えるほうが実は変人ということは結構ある」と徳井さんと綾部さんは納得していた。そういうわけで比較対象が佐伯さんであることでちょっとまともに見えたたいさんだけど、客観的に見たらたいさんも独特だろう。たいさんはシャツの襟が嫌いで、襟を自分で切って着ているらしい。

やさしいズは、二人とも、喋るということがまだ不器用な印象を受けた。でも、そういうところが面白かった。喋るスキルは、ある程度、場数によってこなれてくると思うのだけど、こういう時こういう風に返す、というような前提のない不安定さが面白かった。言葉にするのが下手、もしくは文章にするのは上手くても会話になると表現力が落ちるタイプなのかもしれない。だけど、コントは面白い。コントでの表現力は豊か。やさしいズについては、どういうネタが好きなのかとか、どういうものに興味があるのかとか、どうしてコンビを組んだのかとか、一切わからなかった。ただ、異質だということだけがわかった。すごく気になった。

元々、徳井さんがどういう話をするのか気になって行っていたライブだけど、モチベーションの半分くらいは、面白い若手が見たい、という気持ちになっている。次回は3月だそうです。

前回の公演の様子がよしもとニュースセンターに上がっていたのでリンクを張っておきます。


よしもとニュースセンター : 実録! 芸人奮闘ドキュメント 徳井と綾部の漂流日記

*1:こういう時に、どの程度ネタの内容を書くべきか、迷う。もっと具体的に書きたいけど、ネタバレにもなるし…と思う。