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テレビでの活躍だけが芸人の価値を決めるのか

■お笑い芸人として、「売れる」とは

お笑い芸人にとって、「売れる」ということは、どういうことか。これについて、最近考えている。3月19日に放送された『しくじり先生 俺みたいになるな!!』が、ちょうど考えていることに関わる、興味深いテーマを扱っていた。「ビックチャンスをつかんだのに進路でしくじった」という切り口で、パンクブーブーや、かもめんたるやまもとまさみタイムマシーン3号が、ネタの大会で優勝したにも関わらず、「しくじった」つまり、「売れていない」原因について、昨年のキングオブコント2014で優勝したシソンヌを生徒に、プレゼンテーションをするという番組内容だ。この番組のように、一般的に「売れる」ということは、多くのテレビに出演して、テレビタレントになることを指すのだ。では芸人は、テレビタレントとして活躍するために、それまで何をしているのかというと、一般的には、劇場でネタ、つまり大別すると漫才もしくはコントを創作して上演している。すなわち、お笑い芸人たちはテレビタレントになるために、漫才やコントを手段として創作している、ということになる。「しくじり先生」の中で、かもめんたるが「コントとトーク別ものだった」と言っていたが、これは誰しも感じている通り、全くの別ものであり、ここにひとつ今回の問題提起がある。

 

■コントは「売れる」ための手段か

ここではコントを中心に考えてみようと思うので、コントに限定して話を進めていきたいと思うけれど、この「(テレビタレントになるための)手段としてのコント」というのは、実情は違うと思う。コントの上演を、お笑い芸人としてテレビ的な成功をするための手段ではなく、目的としたい芸人は、おそらくかなり潜在している。テレビタレントになるための下積みとしてコントを創作するのではなく、コントの創作と上演をし続けることを目的とするということだ。本当はテレビタレントとしての活躍は、お笑い芸人の持っている能力を活かすための数ある場のうちの一つに過ぎなくて、お笑い芸人としてやっていく道は、もっと他にも可能性がある。かもめんたるが「コントとトーク別ものだった」と、そうは言うけど、元々別ものだと知っていただろう、と、かもめんたるこそテレビタレントの手段としてコントをやっていたのではなく、コントの創作と上演を目的に芸人をやっているのではないか、と勝手に私は憶測する。かもめんたるはコントが抜群に面白い。当世随一だと思う。演技もずば抜けている。パンクブーブーは、かもめんたるに対して、「仕事の主軸が劇場になっていく」と言っていた。その通りだと思う。しかし、この番組の構成上、「売れる」ということがテレビでの露出の多さを言っているので、「劇場での仕事」というのはテレビ出演の代わりにやむなく行うもののような印象を受ける。でもこれがおかしいのだ。

 

■テレビでの活躍だけが芸人の価値を決めるのか

お笑い芸人への「売れていない」「消えた」という言葉の意味は、「テレビ的な知名度がない」「テレビで見なくなった」ということで、テレビでの価値の有無を言っている。しかし、先に述べたように、全てのお笑い芸人がテレビタレントとなることを目的としていないのだから(潜在的にであっても)、もっと多様な成功の仕方があっていいのだから、テレビ的な知名度がないからということだけで「売れていない」すなわち非成功者である、と表現するのはおかしい。テレビでの活躍だけが芸人の価値を決めるのか。「売れていない」、こういう負の言葉のレッテルは、表現の足を引っ張る。お笑い芸人にとっても、成功するという枠組みを、暗に狭めることになる。観客にも無意識に先入観を植え付ける。テレビのバラエティ番組でテンポのよいトークができることが、振られた話題に対してテレビ的な正解の反応をすることが、それだけが価値だろうか。面白いコントの創作と上演は、テレビでの活躍とは比べるべきものではなく、それぞれ異なる価値のものだ。

 

■テレビに価値を委ねない

ところで、コントの上演を主な活動の一つとしているお笑い芸人を考えてみる。テレビタレントとしての活動と平行しながら、定期的にコントの上演をしているお笑い芸人には、シティボーイズや、バナナマンがいる。
ラーメンズというコンビがいる。彼らは「お笑い芸人」という言葉で括って良いのかどうか、戸惑わせる面がある。これはまさに「お笑い芸人」という言葉が、テレビタレントとしての成功が目的だという意味を含んでいることが原因だ。彼らはテレビタレントではないし、テレビタレントとなることを目的としていない。普段お笑い芸人に興味を持っていない層でも、ラーメンズの舞台は観に行くという層がいる。これは、お笑い好きだろうとなかろうと、それよりもっと純粋に「自分たちの表現を面白いと思ってくれる人」に観に来てもらうことに成功しているということだ。ラーメンズの活動の仕方は、お笑い芸人のテレビに価値を委ねない活動のありかたの可能性を示している。

 

■誰かが作った道だけが道じゃないと思う

劇場に来る観客は、コントを観にわざわざ対価を払ってまで劇場に足を運んでいる、ということは、重要なことだ。テレビ出演での生計の立て方以外にも劇場に価値を置く道がある。劇場だけではないかもしれない。もし、自分の表現がテレビでも劇場でもないとしたら、表現することをあきらめなくていいように、道を作っていけばいい。そのほうが面白い表現ができるのだから。