行列の先頭グランドカーニバル夜の部の感想(コントを上演する劇場の大きさについて)

4月5日(日)に、K-PRO BEST LIVE『行列の先頭グランドカーニバル~夜の部』というライブに行った。S×L、風藤松原、Hi-Hi、ザンゼンジラブレターズ天竺鼠、三四郎、うしろシティ、マツモトクラブ、鬼ヶ島、モグライダー、笑い飯レイザーラモン、トップリード、キングオブコメディ、磁石、流れ星、ハマカーンの、18組の芸人が出演する、大ボリュームのネタライブ。しかも、場所が東京グローブ座という、約700もの座席数を持つ大きな劇場。どのコンビのネタもとても面白かったし、大勢の観客が盛り上がって、お祭りみたいなライブでとても楽しかった。

私は1階席のかなり後ろの方で観た。こんなに大きな劇場で、お笑いのネタを観ること自体が初めてだ。それで今回、コントは元々小さい劇場、座席数が100未満から多くても300くらいの劇場で観られることを前提に作られているから、700人規模の今回の劇場だと、劇場の大きさの影響を受けやすいな、ということを思った。これまで私がお笑いライブを観た一番大きな劇場は草月ホールで、座席数は530人ほどだ。過去2回行ったけれど、そこそこ席が前の方だったこともあって、小さな劇場との差をそこまで意識せず、ピンマイクを使うんだな、くらいにしか感じなかった。今回は、700人規模の劇場で、しかも後ろの方の席ということもあって、劇場の大きさによる差を体感した。そういえば私はコントを観るときに、簡易的な小道具や衣装という身軽さと、普段似たようなサイズの劇場で行うということから、劇場の広さのことを取り立てて考えていなかった。演劇であれば、劇場の大きさを加味しない上演は、ないだろう。上演する演目によって、劇場の大きさに向き・不向きがある。演劇は、人気があるからとか、たくさんの動員が見込めるからといって、単に劇場のサイズを大きくすればよい、というわけにはいかない。コントの場合はどうだろうか。そもそもこんなに大きな劇場で上演するということを想定していないだろうし、劇場の大きさによる演出の変更をするだろうか。大きな劇場向きのコントを選択する、ということはできるだろう。今回出演した方たちは、この劇場の大きさを加味したのかどうか、とても興味深い。昼の回があったから、昼の回にも出た方たちは、もともと大きさを加味していなかったとしても、夜の回ではきっとなにかしら、意識的に考慮に入れた・もしくは身体感覚として無意識的に対応したことだろうと思うのだ。そう考えると、昼の回も観たかったなぁ、と思う。とはいえ、普段どういうコントのレパートリーを持っているのか、詳しく知らないコンビもいるので、そこまで丁寧に考えてみることはできないけれど、今後自分が観るときの参考になるかもしれないので、思ったことをまとめておくことにした。

全体を通して、コントの人たちは、マイクが、おそらく、フットマイクだけだったからなのか(本当にそうだったか否か不明。どちらにしても音量は小さかったと思う。)、センターマイクのある漫才と比べると、後方の私の席では言葉が聞き取りづらかった。また、劇場が広いので笑い声が響いて収まるまで時間がかかるから、笑いが起きた台詞の直後も、台詞が聞き取りづらかった。

ラブレターズは、キングオブコント2011でやっていた、西岡中学校のコント。このコントは会場の大きさの影響をあまり受けなさそうかなと勝手に思う。歌のコントでキャッチーさがあり、知名度もあって、会場が沸くのを感じた。マイクのせいだと思うのだけど、聞こえにくい箇所があった。あと、エンディングで単独ライブの告知をしていたけど、チケットを買ってあるので、とても楽しみだ。

ザンゼンジは、タクシー強盗の罪を自首しようとする男と、その男を乗せたタクシードライバーのコント。タクシーの車内を想定しているから、舞台中央に席を固定したまま話が展開する。動きの派手さはないのだけど、緊張感のある設定と、三福さんのキャラクターの独特で不気味な喋り方とテンポ、良く通る声で、丁寧に観ることができた。そして個人的にこのコントがとても好きだった。これまでいくつか観たザンゼンジのコントはどれも好きな感じだったので、今後積極的にライブに観に行きたいと思った。

うしろシティは、寿司屋の大将の寿司を握る時間が味に影響して…というコント。うしろシティのコントは、かなり幅広い種類があるけれど、これはどちらかというと設定も会話のトーンも日常的なコントだ。そういう点では広い劇場では少し難しそうだ。(とは思うものの、面白かった。)うしろシティのコントは、設定が日常的なもの非日常なもの、演技の自然なもの演技がかったもの、キャラクターのデフォルメしたもの現実的なもの、などかなり種類が豊富で興味深い。

マツモトクラブは、オーディションに来た男のコント。マツモトクラブさんのコントは、まだ他に2本くらいしか観たことがないのだけど、予め用意した音響に合わせて演技をするタイプの一人芝居が多いようだ。劇場が広いので笑い声の収まりに時間がかかって、流れる音響やマツモトクラブさんの台詞が聞き取りづらいところが多少あった。このため客席が(というか私が体感として)期待するテンポよりちょっと速く感じた。マツモトクラブさんのコントは、先日初めてオサレもんで観て、とても興味を持ったので、もっとライブに観に行ってみようと思っている。

トップリードは、寿司屋に寿司を食べに来た男が、大将と一悶着ののち、マグロ釣りと稲作に立ち会うことになるというコント。トップリードは、もともと大きい演技を得意としているコンビだ。特に新妻さんは、新劇の役者のような立ち居振る舞いをする。この点で、彼らは広い劇場に向いていると思う。勝手ながら、普段よりさらに台詞と演技をはっきりした方がこの劇場ではよりうまくいったと思う。トップリードのコントはいつも熱量が高い。生で観ると、惹きつけられるものがある。

鬼ヶ島は、和田さんが先生、おおかわらさんが女子生徒、野田さんが男子生徒で、保健の授業のコント。野田さんの豪快な演技や、派手な展開で力強さがある。それでもやっぱりフットマイクだけではあの広さの劇場では声量に物足りない感じがしたものの、鬼ヶ島のコントは割と広い劇場でも向いている要素があると思った。

キングオブコメディは、頑固なラーメン屋へ突撃取材をするコント。キングオブコメディのコントは、そのまま漫才コントにできそうな、ボケとツッコミのはっきりしたものが多い。高橋さんの台詞や動きが淡々としたものが多いので、やっぱりこれももっとマイクの音量がほしかった。

東京グローブ座というと、シティボーイズの次の公演がこの劇場で行われる。作・演出は前田司郎さんで、前田司郎さんが作・演出をする公演の中では、かなり大きい劇場。どんな公演になるのか、楽しみなので、チケットが取れますように。

ついでに、今回のライブで特に面白かったのは、Hi-Hi、ザンゼンジ、流れ星、三四郎だった。Hi-Hiは、立て板に水のような二人の掛け合いと、上田さんの適当な感じがツボだった。流れ星は、DVDなどで漫才を見るたびにうっとりした気持ちになる魅力的なコンビで、生で観るのは初めてなので期待していたけれど、期待通りのコンビネーションの良い楽しい漫才でまたも魅了された。

大きな劇場でお笑いライブを観るのは面白かった。大きな劇場だからこそ、チケットを取ることができたのだと思う。今後またこのような豪華な出演者でこのライブが行われるなら、是非行きたい。