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『円山スクランブルエッグス』の公演が最高だった

ユーロライブ(渋谷コントセンター)発、かもめんたるさらば青春の光ラブレターズの3組による新しいユニット、『円山スクランブルエッグス』の公演を観た。最高だった。とても好きだった。

2015年ももうすぐ半分終わってしまうけど、私の中では間違いなく、上半期に観た公演のなかでトップを争う公演だった。公演日程は、2015年6月19日(金)〜6月21日(日)の三日間、三公演。こんなに面白いものを作っておきながら、三回しか上演しないなんて!と驚く。私は20日の19時の回を観た。第一回と銘打たれていたので、次回もきっとあるんだろう。早くも楽しみ。

オープニングとエンディングの短いエピソードを除いて、8本のコントが上演された。なかでも、風俗嬢のコントと、童貞のコントが抜群に面白かった。(他のコントのあらすじは後半に書いてます)

 

■風俗嬢のコント

前のコント(童貞)で放心状態となった男(う大)にハイネックのワインレッドのセーターを着せ、場面転換。

掃除婦(槙尾)が現れ、前のコントで散った紙吹雪を片付け、ホテルのベッドメイキングをする。掃除婦がはけて、男(う大)がベッドへ座る。まもなく、女(溜口)が現れる。風俗嬢をホテルへ呼んだ様子。前のコントの人物と、ゆるやかに繋がっているのか、童貞のような振る舞いで、自分が風俗嬢を呼んだことを弁明し始める。俺みたいな風俗とか行かなそうなタイプが風俗に行く、ということが、自分の仲間にとって「おもしろ」だからと、「おもしろ」のために呼んでみたのだ、と言い訳をする。男のモテなさ、気持ち悪さ、自意識が染みだしていて絶妙。

いざ、事に及ぼうとすると、男は「おもしろ」のために自分は自動車になってみる、と提案する。じゃあ君は何をやる?と女に選択権を与えたかに見えるものの、自分で正解の回答を用意している様子で、女が提案するものを却下していく。結局自分で、女の役は「姫」だと打ち明けるのだけど、女に意外とベタだとやんわりと指摘され、一周回って…と言い訳する。女は、要求に応じて熱を入れて姫を演じるのだが、男に一蹴されてしまう。そういう全力の演技は違う、もっとやらされてる感じがよかった、と。よかれと思ってやった全力の演技を否定される。かつて女優志望で演技には自信を持っていた。その否定が堪える女。女の生々しい感情が発露するさまをみて、その感じ!と興奮する男。そのままの調子で演技しろ、と要求する。女はそれに応じるが、なりふり構わず演じており、男が求めているのも耳に届かず。一人で果てる男。

 

上記したのは、このコントの本当におおまかなあらすじ。う大さん、溜口さんの二人のコントは最高に面白かった。う大さんは本当に、人のここを突かれたら崩れるだろうな、というところを突いてくる。だけどそれがすごく可笑しい。それに加えて、女を溜口さんが演じたのもとても面白かった。女は多分、男に優しく接してたけど、この人モテないだろうなぁ、となんとなく自分の方を上に置いてたとこがあるのかなと思うけど、そんな男に指摘されたら嫌なところを突かれた感じが、とても生々しくてよかった。この二人の演技をいつまででも観ていたいと思った。

「女装」って言葉は「男である」ってことの前提が強い言葉だと思う。槙尾さんや溜口さんは、単に男が女装してコントに出てる、っていうより、「単に女の役を演じる」ってことに焦点をあてて観ることができる。そう観ていくと、二人には演じるのに得意な女の性格や個性があるな、と思う。

槙尾さんが演じる女は、自分のかわいさにはそこそこ自信があって、ちょっと生意気な女な感じがする。それからちょっと図太くて、自分が女であることや、女としての弱さを意識した振る舞いをするタイプかな、と思う。

溜口さんは、もうちょっと他人に対して臆病で、繊細なタイプが得意なんだろうと思う。他人が自分をどう評価するかしきりに気にしているような、実際結構かわいいのに、他人から「かわいい」と言われても、素直に喜ばずに「そんなことない、私なんて」と申し訳無さそうに俯いて過剰なほど否定する、でも心の底では「私は結構かわいいはず…」、という自己否定と自己肯定を面倒に絡めた女を勝手にイメージする。

もう何度もこのコントが面白かったなぁって反芻してしまう。う大さんと溜口さんのコントを観ることができてすごく楽しかった。

 

■童貞のコント

前のコント(Mステ)で舞台上に残った男(槙尾)が、新しく現れた男(う大)にダンスできますか?と問いかけるが、童貞なんで無理です、童貞なんで…と断る。槙尾がはけて、舞台転換。

男(う大)が友人(森田)を案内したのは、渋谷のとある小さな神社。会わせたい人がいる、と熱っぽく語る。同じ童貞にとって、神のような存在がこの神社にいるらしい。そこに「ビヨンド」と呼ばれるその神のように崇められる男(塚本)が、ほぼ全裸にギリシャ神話の神のように白い布を纏って現れる。(かもめんたるの『メマトイとユスリカ』のミステリーマンのような格好。)なにやら神々しく、物々しい。男は彼に心酔している。ひたすら心酔しており、ビヨンドの発する言葉に感じ入って、度々一人で絶頂を迎える。男はビヨンドがいかなる存在か、狂乱して弁舌をふるう。唖然とする友人。さらにもう一人の童貞(東口)が現れ、狂騒が頂点に達する。紙吹雪が舞う。

とにかく、う大さんの演技がめちゃくちゃ面白い。ラジオかもめんたるとかを聞くと、淡々としていて、他人の痛さに対する監視の目が鋭くて、自制しきっている様子なのに、ひとたび演技となると歯止めがきかないようにすら思える振る舞いをする。どうしてこんなに振りきれるのか、得体が知れない。完全に心を掴まれる。何度もイキすぎ。しかし何度でも観たい。こんな熱狂的で魅力に溢れた演技をこんな間近で観ることができるなんて稀有な存在だと思う。

 

上演されたコント(タイトルは適当)

・オープニング
会社員のような6人が、渋谷・円山町の再開発について語る導入部分。溜口さんだけ居眠り。土地にはそこで生きた人の記憶がある…というようなことが語られる。これから上演するのは、その土地に生きた人々の断片なのだということがわかる。

(1)喫茶店
オープニングから舞台上に残っていた溜口さんが目を覚まし、そのままに喫茶店へ転換。映画までの時間つぶしで来店したカップル。会話の中で女(槙尾)が男(塚本)にクイズを出す。クイズの答えが気になってしまう店員(溜口)とその他の客(う大・森田・東口)は、答え合わせをしないまま帰ろうとするカップルをどうにか引きとめようとする…

(2)鬼
鬼と人間に生まれた子どもは、二十歳になった時に鬼として生きるか、人間として生きるか決めなければならない。人間になりたい様子の息子(東口)に対し、人間の母さんは人間の男と駆け落ちしたんだから人間になんてなるもんじゃない、と鬼を勧める父(溜口)。そこに、父の友人の鬼(う大)とその家族(人間の妻・森田、息子・塚本)が訪ねてくる。友人の息子(塚本)は先日鬼になったばかりで、父と同じく鬼になることを勧めてくる… 

(3)工場(工事現場?)
工場で一生懸命に働く男(塚本)。その姿に感心する社長(森田)。男は彼女に子どもができたのでお金が必要なのだと言う。しかし、話をしていると、その金は子どもを育てるための金ではないことがわかる。次々と男のクズっぷりが明らかになる… 塚本さんの爽やかなクズが面白い。

(4)Mステ
Mステへの出演が決まったユニット(溜口、森田、塚本、槙尾)。出演に向けて練習をするのだが、三人のボーカルに対し、ダンサーが溜口一人。一人疲弊する溜口。センターの塚本は、森田の歌い方が気に入らない、と二人は仲違いをはじめる。溜口はそんな争点よりもダンサーが一人なことの方が腑に落ちないが、誰にも問題意識がない様子。そんな中、もう一人のメンバー(東口)が、足の怪我が治った、と戻ってくる… 溜口さんのダンスも可笑しいし、槙尾さんがちょっと歌が下手なのも可笑しい。

(5)童貞
上記

(6)風俗嬢
上記

(7)画家の個展
若い男(槙尾)が個展の受付をしている。画家(森田)の個展で、若い男は画家の弟子。画家は最近になってようやく、売れるための絵画ではなく自分の書きたいものを描けるようになったのだが、個展にはほとんど客が訪れない。そこに堅気でないような風体の男(溜口)が現れ、画家に、こんな抽象がばかり描いてないで、昔のように売れる絵画を描いて儲けようと誘う… 芸術を理解しているのは誰なのかゆらいでくコント。

(8)工場の女
工場に勤務する初老の男たち(森田・槙尾・う大)。同僚の若い男(溜口)は、同僚の初老の女(塚本)がモテなさそうだという軽蔑まじりに独り身なのかどうか、話題にする。初老の男たちも、当然独り身に決っているという調子で話を合わせてくるが、彼らは本当は各々こっそり女にアプローチしていたことがわかってくる… 後半になって出てくるう大さんの見た目の強烈さがすごい。

・エンディング
オープニングのコントとほぼ同じ内容だけど、これまでのコントで演じた役の台詞の断片が交じる。

 

今回あまり活躍する役のなかった人も、次は焦点が当たると思って楽しみ。それから、どのコントを誰が書いたのか、できたら知りたい。可能性が溢れすぎているユニットで、今後にも期待しないわけにはいかないです!

 

円山スクランブルエッグス第一回公演「円山町再開発」

日程:
2015年6月19日(金)18:30開場 19:00開演
2015年6月20日(土)18:30開場 19:00開演
2015年6月21日(日)13:30開場 14:00開演
会場:ユーロライブ
料金:前売・大人2,300円 学生1,700円 高校生・笑研1,000円
   当日・大人2,500円 学生1,900円 高校生・笑研1,200円
(全席自由・整理番号順入場)
出演者:かもめんたるさらば青春の光ラブレターズ
構成:相沢直
企画・制作:おぐらりゅうじ