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コントの物語性と、ラバーガールsolo live+「GIRL」のこと

ラバーガールの単独ライブのDVDを新しい方から順番に見ている。YouTubeなどに上げられた過去のネタ番組でのコントも見ている。ラバーガールのコントのひとつの特徴は、テンポの速さだと思う。例えばキングオブコント2014の1回戦で披露していた「子ども服」のコントがそうだ。

例えば、ラバーガールの「子供服」のコントの冒頭は

飛永「いらっしゃいませ」
大水「すいません」
飛永「はい、いらっしゃいませ」
大水「子どもの服買いに来たんですけどどういうのがいいかわからないので意見聞きたいんですけど、子どもの店員さんっています?」
飛永「ちょっといないですね 社会人しかいないんですけども 良かったら私がご案内しますが」
大水「いいでしょう」
飛永「ありがとうございます」 ……

から始まる。ラバーガールのコントのテンポの速さが、具体的にどういう点から生まれているかというと、「」で括った台詞2つ分つまり応答を1ターン、「」で括った一つの台詞の量を長短で表すとすると、ターン数が多くて、かつ一つ一つの台詞が比較的短いところから生まれていると言えると思う。この「子ども服」のコントは、全部でだいたい40ターンからなる。比較として、キングオブコント2013でのかもめんたるの「白い靴下」のコントは、文字に起こすと、このラバーガールの「子ども服」のコントと同じ約1,800字ぐらいなのだけど、ターン数で言うと30ターン程である。つまりラバーガールの「子ども服」のコントの方が、長い台詞が少なく、その分ターン数が多い構成だということになる。キングオブコント2014のシソンヌの「ラーメン屋」のコントも例に挙げてみると、約1,300字で約30ターンだ。

言葉や会話が笑いどころとなっているコントの場合、ターン数の多さは、笑いどころの多さとおよそ比例すると思う。尺の限られたコントの中で、会話のターン数を多くするには、コントの設定の説明をできるだけ台詞に入れずに済む状況、つまり説明をしなくても観客と共有できる状況を設定する必要がある。ラバーガールの「子ども服」のコントは、友達に子どもが生まれたのでプレゼントに子ども服を買いに来た客とその応対をする店員のコントだ。その他にも、同じくテンポの速いコントであるキングオブコント2014での「美容院」、キングオブコント2010の「猫カフェ」や「魔物の館ミステリーツアー」なんかも、同様に客と店員のシンプルな構図が取られている。シソンヌの「ラーメン屋」のコントも、同様に客と店員という構図ではあるが、ラバーガールの「子ども服」のコントと比較すると、単にラーメンを食べに来ただけの客というわけではなく、なぜこの客がこの店に来たのか、という動機の部分がコントの展開と笑いどころと深くかかわっていて、より物語性が強い。ボケの役割を担うじろうさんの扮する"パチンコに負けたおっさん"は、彼自身笑いを取ろうという意志はないし、発した言葉によって笑いが起こることを想定しているわけではなく、ただ「発する言葉が結果的に"ボケ"となっている」のだけど、対して、ラバーガールの「子ども服」のコントは、比較すると「発する言葉が結果的に"ボケ"となっている」という要素は強くなくて、どちらかというと「"ボケ"として"ボケ"ている」というような印象が強めだ。裏返して言うと、人物の行動や台詞の動機が、コントの展開と笑いどころとあまりかかわりがなく、物語性が少ないということになる。

しかしもちろん、物語性が少ないコントばかりというわけではなく、例えば、単独ライブJACOBのDVDに収録されている「寿司屋」というコントは、会話のターン数の多さやテンポの速さは特徴を残しつつ、物語の起伏もある。寿司屋に来た客と板前という設定ではあるが、単なる板前ではなくオネエであるという人物造形があり、コントの展開によって出てくる情報で二人の関係にも変化が起こる比較的物語性の強いタイプのコントだと思う。これはDVDを見た中で一番目くらいに好きだった。

ところで、先日ラバーガールsolo live+「GIRL」を観に行ったのだけど、その中で『GIRL』と題された短いコントの連作があって、これがとても印象に残った。レストラン、ジュエリーショップ、興信所、結婚式場、スタンディングバーという場面の、それぞれ短いコントが連続する構成で、一つ一つのコントは、前述の「子ども服」のようなシンプルな状況設定で会話のターン数が多くテンポが速いコントだ。ネタバレになるけれども、それぞれのコントは、彼女の誕生日を祝うためにレストランを予約しにきた客(大水)と店員(飛永)、彼女へのプレゼントを買いにジュエリーショップに来た客(大水)と店員(飛永)、彼女の浮気を疑って興信所に来た客(大水)と興信所の所員(飛永)、彼女との結婚式を挙げるために式場に来た客(大水)と式場のプランナー(飛永)、結婚式を明日に控えた人物(大水)と友人(飛永)という設定であり、これらのコントを通して見ると、ある人物(大水)の、彼女との結婚までの物語だということがわかる。(コント内の人物名がそのまま演者の名前なのでなんだか説明がしにくい。)これがもし、連作ではなくて、それぞれ独立したコントだったら、一つ一つのコントでは大水さんの演じる人物がどういう人物なのかということはあまりわからない。人物の台詞は、コントの笑いどころのためのボケ的な台詞だという感じをきっと受けるだろうと思う。それが、この人物を軸にした連作になったために、どの場面でも同様に飄々としていて、少しずれた感性を持っている、個性的な性格の持ち主という特定の人物が想定できるようになった。そうすると「あぁ、この人はいつもこういう感じで生きているのか」と思えてきて、コント内の意図的なボケ、とは思えなくなった。物語を自然と見出してしまう。一つ一つのコントはこれまでとほとんど同じなのに、こういうふうに、多面的にみえるように構成することでの物語性の持たせ方があるんだなぁ、と、とても面白かった。

ところで、物語性があるかどうか、ということに注目したのは、キングオブコントなんかを見て、優勝するコントは割と物語性の強いものが多いように感じていて、それは演劇的に物語性が強ければ勝つというわけではなくて、充分笑いを取った上でそのコントに物語の力があれば加点になるのかなと思ったからだ。

ラバーガールsolo live+「GIRL」は面白かった。物販で上演台本が売っていた。すごく魅力的な物販だと思った。買った。演劇の公演だと上演台本が売られていることはよくあるけど、お笑いの単独ライブでもよくあることなのだろうか。それから、会場では前回公演の「T/V」がオーディオコメンタリーCD付きで売っていた。(DVDの再生と同時にそのオーディオコメンタリーCDを再生させて楽しむものだそうでそのアナログ感がなんだか楽しげだった。)私はこのライブの前に今までの公演を見ようと思って「T/V」ほか、買っていたのだけど、会場で買ったらよかったなぁとも思った。それにしても楽しいライブだったので、いまから次の単独ライブも楽しみだし一層好きになった。