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オフィス北野の若手層への興味が止まらない

オフィス北野への興味が止まらない。オフィス北野の若手が出演するライブがとても面白かったからだ。ライブに行ったきっかけは、渋谷コントセンターで初めて観た、マッハスピード豪速球がとても面白かったので、彼らが出るライブに行ってみよう、という気持ちになったからだ。(関連記事⇒渋谷コントセンターというライブの貴重さについて)それで行ってみたライブは、2015年3月21日と5月16日の「サタデーアフタヌーンライブ」と、5月8日の「フライデーナイトライブ」。まだほんの数回だけど、今思っていることをまとめてみたいと思う。どう面白いかということ、なぜ面白いのかということを自分なりに考えてみた。

どう面白いのか…「サタデーアフタヌーンライブ」の場合

「サタデーアフタヌーンライブ」の面白さは、そのプレゼンテーションにある。「生活をデザインするお笑いライブ」という副題は、ライブに来たお客さんに、来る前と、来た後とで、生活になにか少し変化をもたらせたら、ということで、面白いものや考えや情報を提供しようという意図から付けられている。その提供が、ネタとネタの間に挟まるプレゼンテーションのコーナーだ。

このコーナーは、単にプレゼンテーションの技術の高いからという理由で面白いのではない。紹介しているものが興味深い。紹介しているものが、誰にとっても有益なもので情報的価値があるから興味深いのではない。そうではなくて、紹介する人が、本当に面白いと思ったものを熱量を持って紹介しているから、面白そうだな、と心を動かされるのだと思う。

どういうものが紹介されたかというと、たとえば、2015年3月21日のサタデーアフタヌーンライブで、マザー・テラサワさんが紹介したのは、岩波文庫のウォルタ・リップマンの「世論」という書籍。大衆心理がどうやって形成されるのか、人は情報をどのように受け取っているのか、等を分析した内容。私が勝手に想像するのだけど、このライブ以外のところで、この本を紹介するのはなかなか困難じゃないかな?と思う。

困難じゃないかと想像をする理由は、二つあって、一つは、受け取り側(その場に同席している芸人や観客)に深堀りできる素養や興味がないケースが多いだろうなということ。これは、その素養のなさを批判したい意図で言っているのではなくて、お笑いという文化にも、特有の文脈があって、そこから外れたものの話は、広げにくいのは仕方がないことだと思うのだ。

二つ目は、この二つ目のほうが重要だと思うのだけど、その素養・文脈にないものに対する反応として、きっとこの場合だと、「難しそう」「インテリっぽい選択」と、きっと「芸人なのに小難しいものをチョイスしてきた」とか、「そのニッチさ」ということを話題に挙げて、なんとなく外面をなぞった笑いに変えて終わりそうだなと思う。なんとなく共有されていると思い込んでいる、お笑い文化の文脈上にないものは、その文脈から外れているということを面白可笑しく指摘する、という扱い方のステレオタイプがあるように感じる。私は、こういう場面に出くわすと、とても窮屈だなと思う。というのも、こういう場合、「なぜこれなのか」とか「どこを面白いと思ったのか」とかは、あんまり話題にならないからだ。

じゃあ、このサタデーアフタヌーンライブではどうなのか、というと、まず、MCのサンキュータツオさんという方が、私はこのライブで初めて観たのだけど、とても博識で、プレゼンテーションの話をさらに広げることができる素養を持った方だ。1分間のプレゼンテーションで取りこぼした内容を掬い上げ、痒いところに手がとどく。さらに、「文脈から外れているかどうか」ではなくて、「どうしてこれなのか」とか、「どこに注目しているのか」という点で話を広げるので、プレゼンテーション側も「こういう文脈から外れたことを言うとツッコまれる」というような恐れを感じなくて良いので、自由さがある。本当に面白いと思ったものを熱量をもって紹介できる土壌がある。そして、本当に面白いと思ったものを熱量をもって紹介できるような興味の幅の広い人たちが集まっている。

フライデーナイトライブの特徴

「フライデーナイトライブ」の特徴は、「チャレンジコーナー」と「公開審査会」というコーナーがあること。「チャレンジコーナー」というのは、ネタ見せを通過したフリーの若手芸人が出演するコーナー。「公開審査会」というのは、オフィス北野への事務所所属をかけた審査会。審査会には、①チャレンジコーナー優勝二回以上、②北野ファームライブ上位三位以上を三回獲得、③賞レース三回戦以上進出、④事務所内関係者の推薦のいずれかを満たしたグループが挑戦でき、かつ、その日の観客投票で8割以上の承認を得ることが必要だそうだ。(公式サイトより。)オフィス北野は、養成所を持っているわけではないので、実質、このライブへの参加から所属に至るという経緯が多いようだ。

例えば、オフィス北野の若手で、コントが抜群に面白いコンビ、マッハスピード豪速球は2012年11月9日に、THE MANZAIでも異彩を放っていた、馬鹿よ貴方はは(2012年11月9日から条件付き所属だったが)2014年9月12日にこのライブで事務所所属が発表されている。(それぞれ上記に書いた「公開審査会」を経た形なのかどうかは不明。「公開審査会」は新しいシステムなのかもしれない。)そのほかにも、フライデーナイトライブやサタデーアフタヌーンライブ等で活躍している若手の方々は、概ね2010年台に入ってから所属しており、最近の動きの活発さが伺える。

これらの面白い環境がどう作られているのか探ってみる

では、こういう面白い若手芸人をどのように選んでいるのか?ということが気になってくる。そうすると、このライブへ出演するためのネタ見せの審査が一つ目の網の目となるわけだけど、この審査をしているのがマキタスポーツさん、米粒写経サンキュータツオさん、居島一平さん)、ダイオウイカ夫さんだそうだ。(フライデーナイトライブの過去ブログに拠る。現在もそうなのかどうかはわからず。)実はそもそも、「フライデーナイトライブ」は、第一回目が2009年11月20日で、この三組によって立ち上げられたライブで、現在はそこにプチ鹿島さんを加えた4組がプロデュースするライブとなっている。(公式サイト参照 http://kitanofriday.jugem.jp/ )「サタデーアフタヌーンライブ」も、サンキュータツオさんのブログ( http://39tatsuo.jugem.jp/?eid=1244 )を参照すると、第一回目が2014年3月15日で、彼が中心となって立ち上げたライブであることがわかる。

ということは、今のオフィス北野の若手の土壌を作り上げているのは、マキタスポーツさん、サンキュータツオさん、居島一平さん、ダイオウイカ夫さん、プチ鹿島さんといったような40歳ぐらいの世代によるもので、ライブに感じた不思議な居心地の良さは、この人達の考え方が反映された結果によるものではないのだろうか…ということを思うに至る。マキタスポーツさんの「一億総ツッコミ時代」という本は読んでいたのだけど、彼らから、「面白い」と自分が感じるものに正直な生き方とか、研究熱心さだとか、いびつさや多様性を肯定する雰囲気を感じている。サンキュータツオさんが、5月8日のフライデーナイトライブの公開審査会で、「他にない個性を感じたら票を投じてほしい」と言っていたのもとても印象的だった。まだぼんやりとしながら「この人達の考え方」と表現したけれど、それがどんなものなのか、これから知っていきたいと思った。

それから、ここでようやく、私は東京ポッド許可局(サンキュータツオさん、マキタスポーツさん、プチ鹿島さんによるラジオ番組)にたどり着いて、先日初めて聞いてみたのだけど、とても面白くて、今後遡って順に聞いていこうと思った。また面白そうな、興味の対象が増えた。(そして、今は、彼らのような人たちがいるんだなってところまで遡ったところだけど、ではさらに彼らは何に惹きつけられてここにいるのか…ということにも遡れるわけだけど、それはまた今後の興味の向くままにしておこうと思います。)

そんなオフィス北野に大注目です。