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シソンヌのコントについてと、シソンヌライブ『quatre』の感想

シソンヌライブ『quatre』を観た。5月31日14時の回と、6月7日14時の回(千秋楽)の2回観た。

シソンヌライブは、『deux』、『trois』、『quatre』と観た。『deux』で初めてシソンヌを観て、こんなに面白いコンビがいるんだ!と知った衝撃があったから、『deux』が記憶の中では一番好きだ。『trois』も楽しかったけど、個人的には『quatre』が『trois』をこえて面白かった。

シソンヌのコントについて

シソンヌのコントは、設定や構造の面白さよりも、登場する人物の面白さを中心にしていることが多い。特に、人物の再現力が高いことが面白い。再現力がある、とはどういうことかというと、人物の存在に説得力があるということだ。「こういう人いる!」とか「こういう人がいてもおかしくない!」という生々しさだ。これは、人物の性格を、台詞やコントの展開としてしっかり描くことができているということだし、自分の身体を通して舞台上で表現できているということだと思う。

たとえば、キングオブコント2014で披露した、じろうさんが個性的な客に扮する「ラーメン屋」のコント。このコントは、なぜこの客がこの店に来たのか、という行動の動機が、コントの展開と切り離せないし、それが直接笑いどころを生んでいる。そして、その客は、彼自身笑いを取ろうという意志はなくて、発した言葉によって笑いが起こることを想定しているわけではない。ただ彼なりに生きている。でも、観客がコントを通してその人物をみると、彼が発する言葉が結果的に笑いにつながっている。こういうことは、再現力が高いからこそできることだ。(似た内容を過去に書いています⇒ コントの物語性と、ラバーガールsolo live+「GIRL」のこと - KBLOG )

描く人物の特徴

どうしてそういう人物を、高い再現力で描くことができるのかな、と思うと、きっと、コントで描かれるような性格の人物に、普段から興味や関心が高いからだと思う。興味や関心のきっかけは、自分の内面に、そういう性格に似た部分を見つけたり、共感したりすることなんじゃないかなぁと思う。こういった、ある特定の個性の人物についての再現力がずば抜けている、ということは、強力な武器であり、他に替えがたいものだ。

描く人物の性格は、コンビによって特色が出る。シソンヌの場合、内気で内向的だったり、臆病さをもっていたりする個性的な人物を描くことが特徴だと思う。また、内にこもったエネルギーが、ふと外にこぼれる時のちょっと危ない感じ、危ない、というのは、どうコミュニケーションをとったらいいのかわからなさ、みたいなものを、描く力が非常に高いと思う。たとえば、上で例に書いた、ラーメン屋のコントでの、ラーメンを食べに来る男。シソンヌライブ『trois』での「先生の本性」というコントの生徒。美容院や、商店街のおたのしみくじ、写真屋にあらわれる、変わった客など。

包容力について

それからもう一つ、私が勝手に持っている印象かもしれないのだけど、シソンヌのコントからは、なんだか包容力を感じる。これは、コントの展開から感じる印象だと思う。シソンヌのコントでは、じろうさんが演じる内気だったり臆病だったりする個性的な人物が、なにか行動の動機を持っていて、長谷川さんの演じる人物とかかわり、展開が描かれる。こういう場合、長谷川さんの演じる人物は、偏った主張のない、一般的な感性の持ち主として描かれることが多い。だから、じろうさんの演じる個性的な人物と出会った際にも、「変わった人だな」とは思うのだ。その行動や発言に呆れたり、苛立ったり、関わりたくないなと思ったりはする。でも、いかに変わっているか、いかにその行動が変なことか、ということをあまり正したりはしない。いろんな人がいるなぁというやや諦めにも似た形であるかもしれないけれど、そういう振る舞いから、受容されているという感じを受ける。だから、包容力があるという印象をもつのだ。

(もちろん、シソンヌのコントの特徴はこれだけではないだろう。これは今、私が主に感じた特徴を一つ挙げた。)

『quatre』の各コントの感想

コントのタイトルは適当に付しました。順番も上演順ではなくて、覚えている順に挙げています。

・想像して共有しよう
教室で勉強する、学力だけが取り柄の男(じろう)の元に、背が高いことだけが取り柄の男(長谷川)がやってくる。自分のもっていないもの、例えば、強さとか、モテることとかを、もしもっていたらどんな気持ちなのか…ということを話題に展開するコント。先に述べた特徴から考えると、じろうさんが演じる人物も、長谷川さんが演じる人物も、ともに内気な性格で、さらに、長谷川さんが演じる人物の方が、より個性的でコミュニケーションが下手そうだというところが、珍しくて面白い。長谷川さんの新しい演技の一面を観た。

・引っ越し
新婚生活をスタートさせるカップルが、新居に引っ越してくる。物に愛着を強くもつ妻(じろう)と、夫(長谷川)が、旧居から新居に運び込んださまざまな物(ドライヤーとか)をはさんで対立するコント。じろうさんが演じる女性は、思い込みが激しいタイプが多くて面白い。極端な性格の女性だ、と思って観ていると、夫の性格もまた極端だということが次第にわかってくるのが面白い。

・買った買ってない
シソンヌは、登場する人物の性格の面白さや、その再現力の高さが特徴だと書いたけど、このコントは構成の面白いコント。自分がついさっき確かにやった行動なのに、思い返してみると、本当にやったのか、やったという思い込みなのか…と考えれば考える程混乱してくることってあると思うけど、そういうような思い込みが何重にも絡まって、会話している二人の間で事実が捻じ曲がっていくのが面白いコント。別役実さんの『天才バカボンのパパなのだ』を読んだ印象と近い気がした。そう思うと、もっととんでもない事実誤認が起きていく展開も、観てみたかったように思う。

・導かないで
夜の新宿を歩く女性(じろう)が、怪しいキャッチ(長谷川)に絡まれる。流されやすくて、変な人について行ってしまうタイプっているけど、この女性は導かれると、文字通りに、ついて行ってしまう。シソンヌのコントで、不動産屋やアパレルショップに来た金髪の女性が、ほぼ同じ台詞を反復するのが面白いコントがあるけど、それに近くて、二人で同じような行動を繰り返すのが面白かった。

・大学デビュー
高校時代にダサかったやつが、大学生になって垢抜ける「大学デビュー」の逆バージョン。センスがよくてオシャレだったのに、大学に入ってからいつのまにかダサくなってく弟(じろう)に歯止めをかけようとする、いけてる側の兄(長谷川)。「ダサさ」と「イケてる感じ」がところどころ、やや共有しにくく感じたものの、じろうさんの度々挟み込まれる「化学部(科学部?)で流行っているしゃべり方」が楽しかった。

・コンビニ
今回の『quatre』で、私は一番面白かった。一番声に出して笑った。街や店で見かけたら、どういう原動力でコミュニケーションを行っているのか不可解なので、絡まれたくないから目を逸らして気づかないふりをしてしまうけど、社会の中でこういう人は必ずいる!って感じのおじさんをじろうさんが演じる。その再現力がずば抜けている。コンビニに来店したそういうおじさん(じろう)とコンビニ店員(長谷川)のコント。めちゃくちゃ面白かった。

・歌
公園で歌を歌いに行く娘(じろう)と、それを止める父(長谷川)。娘の歌の歌詞が不穏なのでやめさせたいのだけど、娘は歌で自分を表現することに自己陶酔気味で聞く耳を持たない。このコントの前後に、じろうさんがこの役で実際に歌っている映像が流れるのだけど、声色や歌い方に妙な魅力があって、歌詞のみならず、曲全体のおかしさに拍車をかけている。会場で購入したDVDには、この歌がダウンロードできる特典があるそうなので、楽しみ。

・プレゼン
シソンヌのコントで以前スティーブ・ジョブズのパロディ『スケーべ・ジョブズ』というコントをやっていたけど、それと近くて、クリエイティブな社風の会社で、スケベでくだらないことをひたむきにプレゼンする男(じろう)とそれを聞かされる後輩(長谷川)のコント。とてもバカバカしくて楽しい。

・パソコンを使って発表する授業
『trois』の『先生の本性』で登場した野村君(じろう)と先生(長谷川)が再度登場。『quatre』ではコンビニのコントと同じくらい、記憶に残った。パソコンを使って調べてきたことを発表する授業で、野村君が、数学の発表と称して家族のことを発表するコント。じろうさんの演じる、なかなか悲惨な状況に置かれている野村君に憐れさと憎めなさとかわいげを同時に感じ、同時に笑ってしまう。コントの後半で、先生が言った言葉に野村君が大ウケけしたり、自分の発言が大ウケしたので先生が嬉しそうにしている様子に少し安堵する。

各コントについては以上。

次の公演は、2015年12月23日(水)〜30日(水)、赤坂レッドシアターにて、『une』『deux』のリメイク公演だそう。とても楽しみ。その前に『quatre』のDVDも楽しみ。その他、今後の活動もとても期待しています。

シソンヌライブ『quatre』
東京公演:2015年5月29日(金)〜6月7日(日)(全14回公演)
恵比寿・エコー劇場 前売4,500円(全席指定)当日5,000円
金沢公演:2015年6月9日(火)〜10日(水)(全2回公演)
石川県教育会館 前売4,200円(全席指定)