8月7日(日)、しずるの単独ライブ「be born baby」

2016年8月7日(日)、お昼にしずるの単独ライブ「be born baby」をザムザ阿佐谷で観た。(じつは5日にも観た。)

ロックのライブに行くというコントとパチンコのビギナーズラックのコントが特に好みだった。全部面白かったけど、好みで言うと、この二つ。下記、ネタバレがあります。

ロックのライブのコントと、ビギナーズラックのコントは、会話劇が土台になっている。どちらのコントも、初め、一人は本音を隠して会話をしている。ロックのライブのコントだと、村上、ビギナーズラックのコントだと池田が、本音を隠している。ロックのライブのコントの村上は、相手の反応を伺いながら、自分への批判を避けつつ、自分の味方に引きこもうと思っている。会話の中での隙につけ込めるところはつけ込んでみたり、もう少し攻められるかな、と相手に踏み込んでみたりする。ビギナーズラックのコントだと、本音を隠している、というほど自覚的ではないけど、池田は村上に腹が立っていて、そのことを村上に直接的には言わないでいる。でも、言葉の端々にちくちくと悪意を込めている。それがだんだん発露していく。村上は自分への苛立ちを指摘しないではいられなくなる。村上は、池田に、本音はこうだろ、とつきつける。

他人に何かを隠していること、相手が本音を隠して喋っているらしいこと、隠していたことが明るみになって変わる関係、取り繕う様子、そういったものが、過剰すぎる表現ではなく、いかにも現実のコミュニケーションにありそうなレベルで表現される。自然な状態を演じるということは、繊細な演技力が必要なことだと思う。また、「自然な演技」というのは、「ドラマチックさが欠ける」とイコールではないと思うのです。二人の間に流れる微妙な空気の再現力が群を抜いていると思う。そういう再現を見るのはとても面白い。また、このコントを観たい。またどこかで観られるかな。コントにたっぷり尺があるライブでしか観られなさそうかも。

こういうコントばかりなのかというと、そうではなくて、全部で8本のコントがあったけど、他の6本はまたちがった面白さ。

例えば、「アサヒ荘迷コンビ物語」は、めぞん一刻を思い出させるような、古いアパートの管理人と住人の独身の青年とのコミカルなやり取りを描いたコント。コントのオープニングに「アサヒ荘迷コンビ物語」というタイトルと、古アパートのイラストの映像が出され、音楽は村下孝蔵の「陽だまり」(めぞん一刻のオープニング)。物語はどこかにありそうな懐かしい気のする展開、骨太な構成。ベタなやり取りをコミカルに描いてキャッチーで楽しいコント。

「刑事の現場突入」のコントは、二人の刑事が犯人の潜伏している廃ビルに張り込み、今しも突入しようとしているところ。そんな折、別の場所で犯人が逮捕されたと連絡が入る。しかし…という、ナンセンス系コント。(※キングオブコント前だし念のため重要なネタバレ消しました。)刑事ものの定石とも言えるような台詞や展開があるが、その土台となっているのはナンセンスな状況。二人の演技が、特に村上さんの演技が、熱演で緊迫感があるので状況に反してなおのこと可笑しい。

他の4本も面白かった。

上演されたコントは、「学校の不祥事の謝罪会見」、「ロックのライブ」、「爆弾犯の説得」、「ピザ」、「ビギナーズラック」、「銀行の金庫破り」、「刑事の現場突入」、「アサヒ荘迷コンビ物語」(全部便宜的に名前を勝手につけた)。(文章中、一部敬称略しました。)

しずるのコントを観て、面白くなかったことがない、というのは言いすぎかな…

出ているDVDも全部面白い。

 公演情報
日時:2016年8月5日(金)19:00開演、8月6日(土)14:00開演 / 18:00開演、8月7日(日)13:00開演 / 17:00開演 会場:ザムザ阿佐谷 料金:前売4000円 当日4500円

↓去年初めて観た単独ライブ『吉祥寺マチェーテ』のことは下記(かなり詳細にネタバレしているので留意ください)

savoy-truffle.hatenablog.com