7月、8月に観たもののこと

観たものを羅列して、感想を書くことも、興がないなぁと思い始めたので、見て面白かったものを個別に書くのと、ちょっと何か残しておきたいことについて、ある程度まとめて書くことにしようかと思った。(7、8月はナショナル・シアター・ライヴを2つ、コントの単独ライブを8つ、漫才の単独ライブを1つ、演劇を14本、映画を4つ、お笑いのライブを7つ観た。)

 

7月は、かもめんたるがやっている、劇団かもめんたるの公演『ゴーヤの門』も観た。シーン一つ一つが抜群に面白い。けれど長い尺で一つのまとまりのある演目として観た時に、少し物足りなさも、感じる。それから、たくさんの人が舞台上に居るシーンの演出はところどころ違和感があった。私は、演劇は、生身の人間が、舞台上であたかも今そこで起きているかのようなコミュニケーションを再現する、ということに面白さがあると思っているので、それぞれ、リビングに自然と人が集まってくるシーンなどで、舞台上のその場所に居ることを指示されたかのような座り位置とか、みんなが一斉に立って舞台の前の方に集まって話すシーンとかは、それぞれの役の動きに必然性を感じなくて、ちょっと変だなぁと感じた。個性的な台詞が多くて面白かった。石田さんが、一人でるいと君相手の妄想するシーンとか、るいと君のお母さんが光太郎に「抱いて」って言ったこと、そのことを光太郎が皆に言っちゃうところまでの一連のシーンとか、すごく声に出して笑えたし、頭が冴え冴えするような面白さがあった。作・演出の岩崎う大さんが、本気で演劇に…というか、長尺の演目に取り組み始めたら、演劇シーンは変わるかもしれないな、とも思う。この『ゴーヤの門』という演目、というか、劇団かもめんたるについて、もっと普段演劇を観ている人が観た時の感想を聞いてみたい。否定的であれ、肯定的であれ、どのように観るのだろう。

マンボウやしろの告別ショー2016『サイコロ出鱈目』という公演も観た。この公演は、用意されたネタに、誰が出演するかを、サイコロで決めるというもの。舞台上に6つの扉があって、6人の出演者が、扉の後ろに待機。サイコロを振って出た目の扉が開いて、出演者が登場し、予定された演目が始まる。言い換えれば、サイコロの目以外の演者は、出られない。そういうシステムの公演だとは、始まるまで知らなかったけど、劇場に入って、この6つの扉が設置された舞台を観た時、無条件にとてもわくわくした。サイコロを振って演者が登場するまでの一連の演出がかっこよかった。マンボウやしろさんという人を私はよく知らなかったので、観てみた公演。出演者に、しずるの池田さん、犬の心の押見さんがいるのも、観に行こうというきっかけになった。しかし、この公演後しばらくして、マンボウやしろさんは、芸人を引退すると発表した。今後は、脚本・演出家として活動するらしい。辞めるわけでなくなにか作り続けるなら楽しみだ、と思う。

7月末から8月は、単独ライブをたくさん観た。ラブレターズの60分ライブ、GAG少年楽団コマンダンテの単独、別個感想を書いたしずる、チョップリンの単独ライブ。もうすぐというか明日から二日間、キングオブコントの準決勝だ。キングオブコントの準決勝は、賞レースの準決勝なのだけど、これまでの一年間で一番良いコントだと演者自身が思うものを上演する公演と言い換えられる。「良い」というのは、もちろん一番笑えるものであるということを含むけど、それに加えて何をもって良しとするかをそれぞれの演者がどう捉えているかもなんだか感じられるような気もする。今年は、準決勝の段階で、さらば青春の光とニューヨークが敗退していたので驚いた。誰が決勝に進むのか、楽しみだ。個人的には、チョップリンラブレターズが進んだらいいな〜と思う。

2016年8月7日(日)、チョップリン単独ライブ「素人の非日常」

2016年8月7日(日)、夜は、新宿角座チョップリンの単独ライブ「素人の非日常」を観た。とても面白かった。チョップリンは大阪で活動しているので、東京で観る機会が限られている。東京では一回きりの公演。

便宜的に勝手にコントのタイトルをつけると、「かくれんぼ」「ヤクザ」「万引き」「刑務所の面会」「ダンスの練習」「お笑い芸人」「神社」「捨て子」の8本だったかと思う。忘れているのがあったらすみません。

一本目のかくれんぼのコントからほぼ全編、小林さんの異常な存在感が際立っていた。

神社のコントは、明転すると、上手に赤い鳥居が現れている。下手では、野球ボールを探している小学生の西野。すると、小林扮する小汚い神主らしき面妖な人物が鳥居の向こうに現れ、か細い声で西野に、鳥居をくぐるようにしつこくいざなう…というコント。コントの構成は、チョップリンの「ひいじいちゃん」というコントに近いかたちだ。この神主は、本当にこの世のものなのか、なんなのか、得体が知れない。はじめは、なぜそんなに鳥居をくぐらせようとするのか、わからないのだ。まるで異界へ手招きしているかのよう。この神主は鳥居の外には出られないのではないか…そんなことまで思ってしまう。SFなコントではないのはわかっているのだけど、そんな風な不思議な魅力もあった。本当は、賽銭をせびっているだけなのだが。でも、子どもに賽銭をせびるなんていうしみったれた感じ、もしかしたら八百万も神がいたら、一人くらいこんなのがいるんじゃないかと思わせる。

小林さんの演じる人物のヤバさ・怪異さが抜きん出ているのは、観客が、この人は本当にこういう人なのではないか…、と一瞬でも疑ってしまうような自然さからだと思う。懸命に演じて異常さを装っているのではなく、着の身着のまま出た、みたいな軽やかさだ。あんな風に、怪異そのもの、というような様子で舞台に立てる人が他にいるだろうか。

怪異だけど、畏怖しない。あやしいけど妙な親しみやすさがある。田舎の田んぼの畦道で歯の抜けたおじいちゃんに微笑まれるような不思議な愛嬌があるのが小林さんです。

今年のキングオブコントチョップリンに期待大です。

8月7日(日)、しずるの単独ライブ「be born baby」

2016年8月7日(日)、お昼にしずるの単独ライブ「be born baby」をザムザ阿佐谷で観た。(じつは5日にも観た。)

ロックのライブに行くというコントとパチンコのビギナーズラックのコントが特に好みだった。全部面白かったけど、好みで言うと、この二つ。下記、ネタバレがあります。

ロックのライブのコントと、ビギナーズラックのコントは、会話劇が土台になっている。どちらのコントも、初め、一人は本音を隠して会話をしている。ロックのライブのコントだと、村上、ビギナーズラックのコントだと池田が、本音を隠している。ロックのライブのコントの村上は、相手の反応を伺いながら、自分への批判を避けつつ、自分の味方に引きこもうと思っている。会話の中での隙につけ込めるところはつけ込んでみたり、もう少し攻められるかな、と相手に踏み込んでみたりする。ビギナーズラックのコントだと、本音を隠している、というほど自覚的ではないけど、池田は村上に腹が立っていて、そのことを村上に直接的には言わないでいる。でも、言葉の端々にちくちくと悪意を込めている。それがだんだん発露していく。村上は自分への苛立ちを指摘しないではいられなくなる。村上は、池田に、本音はこうだろ、とつきつける。

他人に何かを隠していること、相手が本音を隠して喋っているらしいこと、隠していたことが明るみになって変わる関係、取り繕う様子、そういったものが、過剰すぎる表現ではなく、いかにも現実のコミュニケーションにありそうなレベルで表現される。自然な状態を演じるということは、繊細な演技力が必要なことだと思う。また、「自然な演技」というのは、「ドラマチックさが欠ける」とイコールではないと思うのです。二人の間に流れる微妙な空気の再現力が群を抜いていると思う。そういう再現を見るのはとても面白い。また、このコントを観たい。またどこかで観られるかな。コントにたっぷり尺があるライブでしか観られなさそうかも。

こういうコントばかりなのかというと、そうではなくて、全部で8本のコントがあったけど、他の6本はまたちがった面白さ。

例えば、「アサヒ荘迷コンビ物語」は、めぞん一刻を思い出させるような、古いアパートの管理人と住人の独身の青年とのコミカルなやり取りを描いたコント。コントのオープニングに「アサヒ荘迷コンビ物語」というタイトルと、古アパートのイラストの映像が出され、音楽は村下孝蔵の「陽だまり」(めぞん一刻のオープニング)。物語はどこかにありそうな懐かしい気のする展開、骨太な構成。ベタなやり取りをコミカルに描いてキャッチーで楽しいコント。

「刑事の現場突入」のコントは、二人の刑事が犯人の潜伏している廃ビルに張り込み、今しも突入しようとしているところ。そんな折、別の場所で犯人が逮捕されたと連絡が入る。しかし…という、ナンセンス系コント。(※キングオブコント前だし念のため重要なネタバレ消しました。)刑事ものの定石とも言えるような台詞や展開があるが、その土台となっているのはナンセンスな状況。二人の演技が、特に村上さんの演技が、熱演で緊迫感があるので状況に反してなおのこと可笑しい。

他の4本も面白かった。

上演されたコントは、「学校の不祥事の謝罪会見」、「ロックのライブ」、「爆弾犯の説得」、「ピザ」、「ビギナーズラック」、「銀行の金庫破り」、「刑事の現場突入」、「アサヒ荘迷コンビ物語」(全部便宜的に名前を勝手につけた)。(文章中、一部敬称略しました。)

しずるのコントを観て、面白くなかったことがない、というのは言いすぎかな…

出ているDVDも全部面白い。

 公演情報
日時:2016年8月5日(金)19:00開演、8月6日(土)14:00開演 / 18:00開演、8月7日(日)13:00開演 / 17:00開演 会場:ザムザ阿佐谷 料金:前売4000円 当日4500円

↓去年初めて観た単独ライブ『吉祥寺マチェーテ』のことは下記(かなり詳細にネタバレしているので留意ください)

savoy-truffle.hatenablog.com

サニーデイ・サービスのアルバム『DANCE TO YOU』を買った

サニーデイ・サービスの新しいアルバム『DANCE TO YOU』を買った。

中学生の時にレンタルショップで、なにかいい曲ないかなぁ、とシングルCDをいくつか借りた中の一枚に『スロウライダー』があった。借りたCDを返却したあとに「スロウライダー」だけやたら頭の中に残って、何度か「この曲なんだっけ、あ、あれか、サニーデイ・サービスっていう人たちの曲か」、ということがあった。借りて曲を聴いた時は、特別なことは思わなかった。何度も思い出すので、実は気になっていたのかもしれないと思った。このできごとがきっかけで、この時以降サニーデイ・サービスがとても好きになった。

サニーデイ・サービスを好きになってまもなく、解散した。もう新しい曲は聞けないのかぁ、と思った。再結成した2008年には、もう私は東京にいたけど、もともと音楽をそんなに聴く習慣もなく、あの好きだったサニーデイ・サービスが再結成かぁ、と思ったけど、新しいサニーデイ・サービスの曲はなんとなく聴いていなかった。(解散後すぐの曽我部恵一さんのソロの曲はいくつか聞いたのだけど、なんだか、お父さんなんだなぁ、家族がいるんだなぁという感じを受けて、私が好きだったときのサニーデイ・サービスの感じから変わったなって思って、それ以降あんまり聴いていなかった。)

今年初めて、YATSUI FESTIVAL! 2016に行った。やついフェスに行ったのは、フェスでやるコントが見てみたかったからだけど、そこで初めて能動的に、バンドの人たちがステージで音楽をやるのをみた。サニーデイ・サービスも、初めて観た。なんだか感動した。サニーデイ・サービスはいいなぁ、って思った。

新しいアルバム『DANCE TO YOU』を買ったのは、YouTubeで『パンチドランク・ラブソング』聴いたら、私が一番サニーデイ・サービスが好きだったときの高揚感をなんだか思いだしたからです。サニーデイ・サービスの曲のなかでも好きな曲のうちの一つの『さよなら!街の恋人たち』を聴いて思うのと同じような、夏がやってくるなぁ〜、という、季節へのわくわくした感じがあった。なんだか、この新しいアルバムは、ちょうど今、この8月の頭から聴くのが一番いいような気がした。

とても好きなサニーデイ・サービスの新しいアルバムを発売早々に買って、この夏はこれを聴いて過ごすんだと思うと、なんだかとてもうれしい気分です。

6月に劇場で観たもの(2016年6月)

6月2日 全日本芸人ネタ選手権 『ドッカン!ドッカン! 2ndシーズン』 予選4日目(ルミネtheよしもと
6月9日 もう一度やりたいユニットコントをするライブ(ヨシモト∞ホール
6月15日 別冊「根本宗子」『バー公演じゃないです。』(劇場HOPE)
6月16日 ハッピーアワー(キネカ大森)
6月18日 YATSUI FESTIVAL! 2016(O-EAST
6月20日 かもめんたるコントライブin喫茶茶会記vol.6(喫茶茶会記)
6月24日 ニブンノゴ!Presents 新ネタぽんぽん!(ルミネtheよしもと
6月25日 テアトロコントvol.8(ユーロライブ)
6月25日 SIX GUNS(神保町花月
6月28日 THE GEESE単独ライブ「トロピカリア」(上野ストアハウス)
6月29日 青年団「ニッポン・サポート・センター」(吉祥寺シアター

※観たものを全て挙げているわけではありません

全日本芸人ネタ選手権 『ドッカン!ドッカン! 2ndシーズン』 予選4日目

コマンダンテが出るので、観に行きました。出場したのは、コマンダンテvs笑撃戦隊(グループC)、天竺鼠vsなすなかにし(グループD)、えんにちvsサッチ(グループF)、ウエストランドvsルシファー吉岡(グループG)、ザブングルvs新宿カウボーイ(グループH)、サンシャイン池崎vsブロードキャスト!!(グループJ)。勝ったのは、コマンダンテザブングル天竺鼠、ブロードキャスト!!、ルシファー吉岡えんにちコマンダンテももちろん面白かったけど、笑撃戦隊も面白かった。迷った。それから、サッチが面白かった。個人的な好みの変化として、オープニングで先攻後攻を決めるところや、エンディングのトークなどに、あまり魅力を感じなくなってしまった。たくさんのユニットが出場して、ネタを1本ずつ観るライブから、だんだん足が遠のきがち。でも、そういうライブを観ないと、面白いコントをする人たちに新しく出会うということがなさそう。

もう一度やりたいユニットコントをするライブ

最後にやっていた、お昼の生放送トーク番組に大物俳優が出番でもないのに他の人のゲスト回に遊びに来ちゃって帰ってって言いづらくなって無理矢理共演しちゃうコントが面白かった。描いている違和感の空気が丁寧で絶妙だった。

ハッピーアワー

3部構成になっている、とても長い映画。この長さによって、多くの人物を多面的に見せることができている。「こういう人物ですよ」というわかりやすい提示ではなく、日常生活の中で、ある人の色んな面を見て、その人の輪郭を自分なりに受け取るような、そんな描き方だった。序盤で「なんだか嫌なやつだな」って思ってた人も色々な行動をみていると「気が合いそう」って思ったりするのが自分の現実の人間関係のようだった。こんなにも長いので、擬似的にも、登場人物たちの人生が、ずっしり自分にのしかかってくるようで、少し精神的に疲弊した。でもとても面白かった。保存性の高いジャムを手に入れたような感じ。蓋を開けては少し舐め、また蓋をする。またふとした折に蓋を開けて味を確かめたくなると思う。

YATSUI FESTIVAL! 2016

フェスとはどんな感じだろうか、と思って、行ってみた。コントをする人たちが、コントをするのを観た。会場は熱気があって、観客は楽しそうにみていた。かもめんたるのコントがすごくウケていて、テンションが上がった。この日のバラエティに富んだ彩りのうちの一つとしてのステージ。中高生のころに、ずっと聞いていた、サニーデイ・サービスのステージをみて、とても感動した。

青年団「ニッポン・サポート・センター」

私は以前から青年団が好きで、(近頃は、そこまで頻繁に足を運んでいるわけではなかったけど、)よく観に行っていた。この公演を観て、私は自分の好みが変わったのかな、と思った。あんまり面白いと思えなかった。青年団の中でも、できごと一つ一つが笑いを生む展開になっていたし、セリフ自体も笑いを狙ったものが多かった。「笑い」という点だけ取ると、私の好みと青年団とは大きく外れるのだと思う。端的に言うと、「笑い」の感じがダサかった。「笑い」以外の部分で青年団が好きなのだと思った。

5月に劇場で観たもの(2016年5月)

5月2日 フルコース1000円(びーちぶ)
5月3日 ニューヨーク単独ライブ『GOLDEN YEWYORK』(ルミネtheよしもと
5月4日 すいているのに相席4(座・高円寺
5月5日 家がわらってる(劇場MOMO)
5月6日 Wけんじ企画『ザ・レジスタンス、抵抗』(こまばアゴラ劇場
5月7日 大阪よしもとネタライブ「上京」(ヨシモト∞ホール
5月7日 さらば青春の光単独ライブ『ノリノリノリ』(キンケロ・シアター
5月8日 ナカゴー特別劇場『もはや、もはやさん』(ムーブ町屋ハイビジョンルーム)
5月11日 しずるのトークライブ(阿佐ヶ谷ロフトA)
5月12日 子供鉅人『真夜中の虹』(駅前劇場)
5月20日 ロロ『あなたがいなかった頃の物語と、いなくなってからの物語』(東京芸術劇場シアターイースト )
5月21日 『8月の家族たち』(シアターコクーン
5月22日 GAG少年楽団単独ライブ『ストレート2』(ヨシモト∞ホール
5月22日 『サルゴリラとライスとしずるのライブ』(神保町花月
5月23日 ナショナル・シアター・ライヴ『ハムレット』(シネ・リーブル池袋
5月26日 「この高鳴りをなんと呼ぶ」(ヨシモト∞ホール
5月27日 テアトロコントvol.7(ユーロライブ)
5月29日 テニスコート『最高に盛り上がるイエイ』(プーク人形劇場 )
5月30日 弱い人たち会議中vol.1 弱い人たち×犬の心(ユーロライブ )

※観たものを全て上記に列挙しているわけではありません。

フルコース1000円

SMA所属のだーりんず、ロビンフット、チャーミングの3組による、各組新ネタを5本ずつ披露する贅沢なライブ。SMAの劇場、千川のびーちぶへ初めて行きました。地下の小さな会場。とにかくだーりんずが面白かった。

すいているのに相席4

座・高円寺2にて。どのコントもパロディと遊び心の宝庫でした。私は会話劇系のコントが好きなので、好みのタイプとは違ったけど、このタイプの笑いの中では一番素直で全力で楽しそうで、観ていてとても楽しかった。パロディ系の笑いは、ややもすると知識のひけらかしみたいになったり、分かる人が分かればいいというような、人を選ぶ感じだな、と思うことが、私にはあるのだけど、そういうのは全然感じなかった。「すいているのに相席」が好むコントの色というものが濃くあった。

Wけんじ企画『ザ・レジスタンス、抵抗』

すっかり山内ケンジさんのファンになり、この公演もとても楽しみにしていました。平田オリザさんの作品は、人間の性欲からかけはなれた理性的なものが多いので、そのオリザさんの青年団の俳優が、不倫したり、キスしたり、なんとか体の関係に持ち込もうとしたり、インポについてなやんだりする様は、青年団をよく観る観客としても新鮮でした。俳優の演技が細かくて、反応が生々しいので観ていてとても面白い。こういう演劇を、小劇場で間近で観るということが、私の好きな演劇体験だな、と実感しました。

ロロ『あなたがいなかった頃の物語と、いなくなってからの物語』

ロロは、2012年に『LOVE02』を観、今年2016年1月に『校舎、ナイトクルージング』を観て、三回目の観劇。私は会話劇が好きなので、前回観たワンシチュエーションの会話劇である『校舎、ナイトクルージング』はとても好きだった。ロロの作・演出の三浦さんの各作品は、前向きで温かい眼差しの人物たちが時に困難に直面してもなおまっすぐに歩んでいくような、純粋さがある。今回の作品は、会話劇ではなく、もっと抽象的な舞台上でのファンタジーのような演劇で、少し好みとは違いました。

『8月の家族たち』

10年ぶりくらいにシアターコクーンへ行きました。ある家族が、父の死をきっかけに集まり、揃うのだけど、それぞれの関係の歪みや、心に貯めた憤懣が徐々に露呈していく、会話劇。脚本の内容はとても好きだったけど、シアターコクーンという広い劇場の、当日券でS席だけど後ろの方の席で観て、最近、自分が「人間関係を描いた会話劇を俳優が細かく再現する演劇を間近で観る」のが好きだと気づいたことと照らし合わせると、俳優の演技が細かく見えない観劇体験は、私にとってはあまり重要ではないなぁ、と思ってしまった。

『サルゴリラとライスとしずるのライブ』

タイトルの3組がそれぞれのコンビのコントと、6人でユニットコントをするライブ。今回のユニットコントの担当は、しずるの池田さんだと、前回のライブで発表されて以来、心待ちにしていた。ユニットコントは、なんと2本上演された。なぜ2本かというのは、誰も頼んでいないのに、池田さんが勝手に2本書いてきたからだそうだ。そしてエンディングのトークで知ったのだけど、池田さんは書くのがとても早いらしい。このライブは5月22日に開催されたけど、4月の末には既に書き上がっていたということでした。そして、池田さんは演出も細かいそうで、その、コントに対する取り組み方に私は一層の信頼を寄せるに至りました。もちろん、上演されたユニットコントは2本ともとても面白く、もう一度しずる池田さんの書く順番が回ってくるのがすでにもう楽しみです。

ナショナル・シアター・ライヴ『ハムレット

めちゃくちゃ面白かった。ナショナル・シアター・ライヴ、見逃せない。なるべく行きたい。

4月に劇場で観たもの(2016年4月)

4月5日 かもめんたるコントライブin喫茶茶会記vol.5(喫茶茶会記)
4月6日 ハイバイ『おとこたち』(東京芸術劇場シアターイースト)
4月14日 "オフィス北野VS"人力舎(新宿バティオス)
4月17日 テアトロコントvol.6(ユーロライブ)
4月20日 ブルドッキングヘッドロック『スケベの話〜オトナのおもちゃ編〜』(ザ・スズナリ
4月26日 神保町大阪文化祭落語芝居「らくだ」(神保町花月
4月28日 ラブレターズ60分ライブ『愛のために私は死ねない』(SPACE梟門)
4月29日 チョップリントークライブ CARD(新宿角座

かもめんたるコントライブin喫茶茶会記vol.5

コントの上演と合間のトークのライブ。コントはKOCでやっていたコンタクトレンズのコントの別バージョンや、「ドリームクラッシャー」の短い版など。ただただ面白いコントが観られて楽しくて居心地のよいライブ。

ハイバイ『おとこたち』

初演は東京で見逃したけど、評判が良かったので、わざわざ長久手に赴いて観たということもあり、ハイバイの中でも特別面白かった記憶が濃い作品。今回は、サンプルの松井周さんが出演。サンプルの『ひとりずもう』を観て以来、松井さんのファンになりつつある。不倫男の役、人の隙にスルリと入り込んで臆面もなく二股する、ダメでどうしょうもないけど愛敬だけはある、でもその愛敬も不気味、みたいな感じが良かった。

"オフィス北野VS"人力舎

新しくはじまったオフィス北野のライブ。オフィス北野の若手が、他事務所とネタを披露して観客投票で勝敗を決めるライブ。なりふり構わず勝ちに来ている感満載のオフィス北野勢が熱くて不器用な感じでカラーが出てた。オフィス北野からはマッハスピード豪速球、馬鹿よ貴方は、ランジャタイがこのライブの固定らしい。今回はかっぽんかっぽんと銀座ポップが出演。銀座ポップさんがすごくウケていた。人力舎からは三福エンターテイメント、ブルーセレブ、リンゴスター、ドリーマーズ、トンツカタン。次回はどこの事務所と対戦するのか楽しみ。

ラブレターズ60分ライブ『愛のために私は死ねない』

新作コント5本のライブ。会場がSPACE梟門。ASH&Dの行うライブの会場のチョイスが演劇的でとても好きです。好きなことを自由にやっているような感じが出ていて、とても好きだった。定期的にやるそうで楽しみ。

チョップリントークライブ CARD

ゲストがかもめんたるなだぎ武さんだった。チョップリンが東京にくる貴重な機会。チョップリンのトークを初めて観ました。

チョップリンと、かもめんたるは、1本ずつコントも披露。(チョップリンは、黒人のコント、かもめんたるは、サッカーのコント。)

小林さんが、自分とう大さんは、舞台でただただ椅子に座っているだけでも何分でも観てられるはず、と主張し、実際やってみることになった。ピンスポの当たる舞台中央の丸椅子に、一人無言で座り続けて、お客さんが観てられなくなったら手を挙げて、5人挙がると終了。終了するまでの時間を測って競うことに。う大さんが舞台上で座っているのを観るのは、全く飽きなかった。実際、3分くらいすぎて、ぱらぱらと5人手が挙がったのだけど、これはずっと観てられすぎてライブが終わりそうだったから空気を読んで挙げた5人だと勝手に思っている。う大さんは、そこに居るということを疑いない調子で舞台上に居る、という感じだった。舞台に居ることを、納得させられているような心地良い緊張感と圧力があった。そういう当然さを帯びて舞台上に立てるということが、俳優として重要な佇まいなんではないかと思った。そんな佇まいが急にできるのもすごい。う大さんの後に、槙尾さん、小林さんとチャレンジして、二人とも1分45秒くらいだったかと記憶しているけど、う大さんに比べて、何かしなければ、という拠り所のなさみたいなのがにじみ出ていて、観ている側は徐々に不安になった。小林さんも槙尾さんも、実際演じるとなると、そんな拠り所のなさが出る軟弱さはもちろんないけど。

トークでは、小林さんがスペアキーをたくさん持っていることが次第にわかるという一連の話の流れも、おかしかった。小林さんの柳のように、押しても手応えがなさそうでひらひらとしたマイペースさが面白かった。

チョップリンはもっと東京でもコントをしてほしい。